更新日:2023年03月01日 13:17
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老後の仕事選びに「シルバー人材センターが頼りにならない」理由

もし60代前半がシルバー人材センターを利用したら?

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写真はイメージです

 では仮に、60歳で定年を迎え、再雇用を受けずに退職した人が地域のシルバー人材センターで仕事探しを始めたらどうなるのか。一つの例を出してみよう。  長年、都内の会社に営業として勤めた男性、Aさんは、60歳で定年を迎え、それなりの貯金と退職金もあったため、再雇用を受けずに退職した。働き詰めだったので奥さんとの旅行など、しばらくはゆっくり過ごそうと思ったためだ。  しかし、特段趣味もなく、時間を持て余して61歳を迎える前に地域のシルバー人材センターに足を運んだ。すると、そこで働いている人の多くは自分よりも一回り年上の70代前半ということを知る。  この段階でのシルバー人材センターの反応は2つに分かれる。比較的若い60代前半を重宝するケースと、年配の人が多いし、仕事もそう多くないからとわりと冷めた対応となるケースだ。最近では、「自分はまだシニアではない、もっとバリバリ働きたい」とシルバー人材センターを活用しない人が増え、むしろ人手不足となるセンターもあると聞く。  センターの反応はともかく、次にAさんは、自分のイメージした仕事があまりなさそうなことに戸惑う。現役時代は内勤も多い営業職だったAさんは、書類作成や営業などの仕事なら自分の経験を活かせると思ったのだが、勧められる仕事は「60代前半ならまだまだ元気だから」と、草刈りやさらに年配の方の介助の仕事がほとんどだった。事務仕事は主に女性のシニアがやっていて、しかも手書きで宛名書きなどの仕事も多いという。  とりあえずAさんは、行政の配布物を家々に配達する仕事と、草刈りの仕事をすることにした。草刈りの仕事は単発。行政の配布物の配達は毎月定期的にあるが、数日で終わってしまう。それぞれお小遣い程度にしかならない。しかも、シルバー人材センターの会員同士の飲み会が発生し、むしろ出費のほうが大きかった。  配布物の配達は一人で気楽だが、草刈りは造園会社の人に監督されるので面倒だった。また、結構体力も必要で、炎天下では大変な仕事だ。駐輪場や市の施設の管理の仕事も希望しているが、それらは人気で空きがなく、順番待ちだという。 「こんなことなら普通にどこかの会社に勤めたほうがやりがいも収入もあるのではないか」そう思ったAさんは、ネットで検索したパートの営業職に応募し、採用された。最初はシルバー人材センターの仕事と掛けもちしていたが、給料は段違いだし会社の健康保険にも入れる。  結局、フルタイムの契約社員になり、シルバー人材センターではもっと年齢が上がるまではしばらく勤めないことにしたという。
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シルバー人材センター活用に向いている人・いない人
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50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中

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