「始業1時間前に出社」「メモを食べて覚えます」昭和の“モーレツ社員ノリ”を引きずるシニア社員の危うさ
人生100年時代。「人生最後の職場を探そう」と、シニア転職に挑む50、60代が増えている。しかし、支援の現場ではシニア転職の成功事例だけでなく、失敗事例も目にする。シニア専門転職支援会社「シニアジョブ」代表の中島康恵氏が、今回は企業側が止めなければならないほどモーレツなシニアの例を紹介する。
人手不足でシニア採用に舵を切った大手企業などでは、「シニアは真面目」と絶賛する場合がある。確かに現代よりもブラックな環境が当たり前の時代を経験したシニアには耐性があるかもしれないが、自己申告の元気を信用すると命に関わる事態にもなりかねない。
著名なテーマパークでのシニア採用など、従来のイメージが変わるほどシニア採用が活発になっており、私たちもその傾向についてインタビューされることが増えている。
シニアを積極的に採用する企業の中には「シニアは我慢強く、真面目で現場に馴染みやすい」と考える採用担当も多い。確かにシニアは時代背景から、悪い言い方をすれば「ブラック企業に耐性がある」人も多く、ちょっとやそっとの過酷さでは音を上げない部分が評価されやすい。
もちろん、だからといって過酷な労働条件や環境、仕事内容をシニアに押し付けてはいけない。やる気に満ち溢れて、自らブラックでモーレツな働き方をしてしまうシニアもいるが、むしろ企業側が抑制する必要のある注意点も出てくる。
今回はそうした企業側からのストップが必要となった、モーレツシニアのエピソードを5つ紹介する。
その前に、モーレツシニアを企業側がセーブさせるべき理由について述べたい。もちろん、シニアのやる気や忍耐強さが企業に評価されるのは悪いことではない。実際に忍耐強いかは個々人によるが、現在の70代後半は「モーレツ社員」「企業戦士」と呼ばれていた団塊の世代であるし、60代が社会人となった当時も、まだまだ家庭より仕事優先、会社の命令は絶対という風潮は残っていた時代のため、過酷な環境への耐性がある人は多いだろう。
ただし、程度の差こそあれ、誰もが皆、若い頃よりは体力・気力が衰え、健康リスクも高まっている。つまり、もはや若い頃のような無理は効かないのだ。
まだまだ若い者に負けたくないという気持ちや、自身の体力を過信して、つい無理をしてしまうシニアも少なくないが、実際には体力がついてこないことで仕事のパフォーマンスが上がらないばかりか、大きな事故につながる場合もある。体調を崩しても回復しにくい。
だからこそ、健康面についてはシニアの自己管理に任せるのではなく、企業主導で多少の余裕を持って仕事をセーブさせる必要がある。私たちの社内でも、シニアのフルタイム勤務は基本的に全員8時間ではなく7時間にセーブしている。

シニア専門転職支援会社「シニアジョブ」代表の中島康恵氏
シニアは「ブラック労働」に慣れている?
気持ちはまだまだモーレツ社員だが体は…
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50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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