更新日:2023年03月27日 15:51
デジタル

ひろゆきが語る「金子勇とWinny事件」日本にとって”大きすぎる損失”とは?

抜群だった金子勇さんのプログラミングセンス

 また、Winnyを問題なく動かすには、多くのコンピュータが自動的にシナプスのように繋がって処理される必要があり、そのためにはいろんなアルゴリズムや、負荷のかからないプログラムを書く必要があります。  金子さんには、そういったプログラムを作る抜群のセンスがありました。  例えば、金子さんがプログラミングした「画面上の頭部の画像をマウスで動かすと、それに合わせて髪の毛が綺麗に動くように見える」という単純なソフトがあります。仮に、このソフト上で髪の毛を1本1本の動きをシミュレーションすると、すごい計算が必要になって処理が追いつかず動作に問題が出ることになるのです。  しかし、金子さんは「これくらいの毛量で、この動きをすれば人は自然に動いているように見える」という絶妙なラインを見いだして、処理を減らしていました。だから軽妙に動作するうえにソフトのデータ量も小さくて済むのです。  そういったところが金子さんのセンスのよさです。でも金子さんが逮捕したことで、日本はプログラミングのセンスのある人が活躍できない社会になってしまった。これは、とてももったいないことです。  金子さんは東京大学の研究者だったので、あの手のタイプの人がちゃんと残っていれば、恐らく日本のAI技術などもさらに進化していたと思います。  今ではWinnyのシステムを使っている人は見かけません。それは社会の「Winnyがなくなったほうが管理しやすい」という思惑には勝てなかったからだと思います。  そもそもWinnyが問題になったのは、違法なファイルのやり取りや、それに伴うコンピューターウイルスの蔓延です。ファイルのコピーも簡単だし、管理する中央サーバもないので「このファイルを消したい」と思っても止めようがない。結果としてWinnyは問題視され、消えていきました。  しかし、Winnyをなくしても世の中はあまり変わらなかったと思うのです。冷静に考えれば、Winnyの場合は探しても欲しいファイルが手に入らないこともあります。P2Pの性質上、ファイルの入手は誰かがネットワーク上にアップするまで待ち続けるしかないからです。  それが今や、必要な情報はネット上を探せばそれなりに見つけられるし、ダウンロードもできます。Winnyがなくなったとしても、価値のある情報やデータファイルはどこかにアップされ続けています。  つまり、Winnyがあろうがなかろうが、世の中で誰かが持っているファイルを管理下に置くことなどできないのです。Winnyが社会から抹殺されたことに意味があったのかは不明です。しかし、少し本気で探せば、ちょっとしたパソコン知識がある中学生なら欲しいファイルやソフトを入手できてしまう状況があるのは紛れもない事実です。
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Winny事件の教訓を日本はどう生かすべきか
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西村博之(にしむらひろゆき)1976年、神奈川県生まれ。東京都・赤羽に移り住み、中央大学に進学後、在学中に米国・アーカンソー州に留学。1999年に開設した「2ちゃんねる」、2005年に就任した「ニコニコ動画」の元管理人。現在は英語圏最大の掲示板サイト「4chan」の管理人を務め、フランスに在住。たまに日本にいる。週刊SPA!で10年以上連載を担当。新刊『賢い人が自然とやっている ズルい言いまわし

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