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アメリカの2つの銀行が破綻…世界の金融市場が揺れる今「投資すべき個別株」をプロが厳選

市場関係者が危惧したリーマンショックの再来

アメリカ シリコンバレー銀行

アメリカのシリコンバレー銀行

 まずは株式投資をする前に、今の市場環境を確認しておこう。  3月17(金)にアメリカ市場が取引を終了すると、世界中の金融関係者は20日(月)にアジア市場が開くまでは週末を楽しむというよりも、スイスの大手銀行、クレディ・スイスが来週はどうなっているだろうかと不安に思った。なぜなら、2008年に起きたリーマンショックの再来を誰もが想像したからだ。  スイスの中央銀行はすでにクレディ・スイスに流動性を供給すると表明していたが、市場関係者の多くはそれだけでは今回の危機は回避できないだろうと考えていたからだ。  週末にスイスにあるもう一つの大手銀行USBがクレディ・スイスを買収合併することが発表された。損失が出た時には公的補填を当局が保障したことからも明らかなように、強力な政治主導の合併だった。  スイスは決して大国ではない。そこに世界を代表する大銀行が2つもあるのは、顧客が国内だけでなく世界中の富裕層や企業を相手にしているからで、そこが経営破綻することはすぐさま世界中に影響が波及することを意味する。

アメリカの政策金利は1年で4.75%引き上げ

 20日から始まった市場はひとまず危機を回避できたと考え、株式市場は安定している。クレディ・スイスの前には、アメリカの2つの銀行、シリコンバレー銀行とシグニチャーバンクの破綻もあったが、これも、バイデン大統領はすぐさま預金の全額保証を表明し、他の金融機関に経営不安が波及することを阻止した。金融機関そのものは守らないが、金融システムの不安定は断固阻止するというものだ。  いま、欧米はインフレと金融システムの安定の間で政策をどうすべきか揺れている。しかし、原則はインフレ対策が最優先という姿勢だ。  ひとまず金融危機は回避できたからか、FRBは22日に政策金利をさらに0.25%引き上げた。今回で9回目の引き上げで、この1年で金利を4.75%も引き上げたことになる。これは、株式市場と金融機関の経営に大きく影響する。  まずは原則として、金利が上がることは株式価格を下げる。  また、銀行が集めた資金を債券で運用している場合は、金利が上がることは含み損を増やすし、銀行は短期で調達し、長期で貸し出すことが多い。それは、短期の方が金利は低く、長期の方が金利が高いからだ。その利ざやで銀行は利益を確保していくが、これだけ金利が上がると、このフォーマットも大きく毀損してしまう。  インフレ対策のためには金利を上げたいが、それは時に金融機関にとって経営環境が悪化することを意味するのだ。
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金融危機は本当に去った?
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経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『つみたてよりも個別株! 新NISAこの10銘柄を買いなさい!』、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』、『しあわせとお金の距離について』、『安心・安全・確実な投資の教科書』など多数 twitter:@SatoHaruhiko

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