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福山雅治、全盲役を好演『ラストマン』はどこまでリアルなのか? 視覚障害の当事者たちに聞く

白杖を勝手に触るのはNG!

 意外とアテンドの方法は知られていないらしい。いきなり知らない人に手を握られるのは誰だっていやだし、白杖は自分で知りたい場所を探るために使うものだから、勝手に触ってはいけません。さらには「後ろから押す人もいる」という声も。怖い怖い!  視覚障害者のアテンドは、ドラマにあったように、アテンドする人の一歩前に立ち、左右のどちらかの腕を軽く持ってもらう。障害物を避ければいいだけなので、過剰な世話は禁物だ。  皆実が捜査で活用するのが、アイカメラ。耳にかけて前方を写せるようになっている小型のカメラで、皆実の前に何があるか遠隔で晴眼者(せいがんしゃ)が確認できる。その他、自分の車や人物の顔を登録して誰かを認識できるようだ。これに似たような商品はすでにいくつか開発・発売されている。  何十万円もするので、残念ながらブラインドライターズのスタッフで使っている者はいないが、ドラマを見て「あのアイカメラ欲しい!」という声が相次いだ。

疑問が相次いだドラマのシーンも

テレビ

※画像はイメージです(以下同じ)

 視覚障害者はスマホやパソコンの画面を「読み上げ」させて利用するのだが、IT機器を使いこなすことも意外と知られていない。iPhoneならボイスオーバーという機能を使う。通常、彼らがは通常よりも速い速度で聴き取っており、晴眼者からはキュルキュルと早回しにしか聞こえない。それでも、ドラマのシーンには疑問が相次いだ。 「読み上げスピードが速くて、聴き取れなかった」(直美さん) 「だいたい普段は80〜85%で聴いているけれど、そもそもiPhoneのボイスオーバーの100%が何倍速なのかわからない」(よりこさん)  自分の能力を見せつけるために、皆実はわざといつもより高速の再生にしたということか、それともあのスピードで聴きとれる人がいるのか。  また、第1話で犯人を追って団地に来た皆実が、指を鳴らしてその反響音で周囲の建物の様子を知るシーンがある。これは「エコーロケーション」といって、一般的には舌打ちをしてその音の反響で、障害物の有無を知る方法だ。この点でも皆実の能力はずば抜けている。訓能力の高い人は、エコーロケーションだけで自転車に乗ることもできるらしいが、一般的には「そこまでわからない」という。
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視覚障害者が「見る」こともある?
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ライター・編集、少女マンガ研究家。スタッフ全員が何らかの障害を持つ会社「合同会社ブラインドライターズ」代表。著書に著名人の戦争体験をまとめた『わたしたちもみんな子どもだった 戦争が日常だった私たちの体験記』(ハツガサ)などがある

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