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なぜ大手メディアは「軍拡」路線を支持するのか?<望月衣塑子さんインタビュー>

軍拡より生活!

自衛隊

写真はイメージです

―― 望月さんは賛同人の一人として「軍拡より生活」の署名活動への協力を呼びかけています。 望月 いま必要なのは、生活と平和を守る女性目線の政治です。昨今の日本では国民の生活が苦しくなり、社会が不安定になっています。  労働者のうち非正規は約40%で、働く女性のうち54・4%は非正規、一方男性は22・2%です。貧困・格差が広がり、結婚・出産も難しくなっています。生涯未婚率は年々上昇、昨年の50歳時の非婚率は男性28%、女性17%です。一方、昨年の出生数は79・9万人で、政府の推計より11年も早く80万人を下回りました。  自民党は憲法改正の理由に「教育無償化」を掲げ、最近では「異次元の少子化対策」を打ち出していますが、国会質疑では給食費無償化に必要な経費の試算すら行っていないことが判明しています。自民党の教育重視は口だけだということです。  現に教育予算はほとんど増えず、むしろ国立大学の運営費交付金は減っています。東京芸術大学では予算不足と電気代高騰から学費値上げ、学食値上げ、図書館の新書受け入れの停止、練習用ピアノの売却、全館の空調停止などを余儀なくされ、この4月には「電気代を稼ぐコンサート」を開催する予定です。  この状況で軍拡を進めれば国民生活にしわ寄せが来ることは明らかです。政府は新たに「防衛力強化資金」の新設を決定しましたが、そこには医療関連機構の積立金746億円、中小企業向け基金の残金2350億円が含まれています。看護士たちの給与はただでさえ民間と比べて低いのに据え置きで、軍拡予算に充てられることになります。やっていることが本末転倒ではないでしょうか。政府は今後5年で防衛費を43兆円まで増やす方針ですが、その予算があればどれだけの国民が救われるか。軍備を増強する前に、国民生活を豊かにすべきです。  軍拡で国民負担が増え、戦争の危機が高まれば、国民は将来に不安を抱いて結婚や出産も控えるようになるでしょう。私たちは若者世代や子育て世代が希望を持ち、安心して生きられる社会を目指すべきです。 (4月7日 聞き手・構成 杉原悠人) 初出:月刊日本2023年5月号 望月衣塑子(もちづき・いそこ) 東京新聞社会部記者。1975年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒業後、東京・駐日新聞社に入社。『新聞記者』(角川新書)など著書多数。
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2023年5月号

特集 米中覇権交代へ 対米従属では生き残れない
「パクス・アメリカーナ」から「パクス・アシアーナ」へ 進藤栄一
ドル覇権の崩壊が始まった 白井聡
この転換期を日本はいかに生き延びるか 寺島実郎
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