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岸田政権の支持率をあげるたった一つの方法<著述家・菅野完>

―[月刊日本]―

安倍・菅時代より「右」で「タカ派」な岸田政権

自民党

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 2千億円の国費を投じ、トマホークを買うことが決まった。これで日本は「敵基地攻撃能力」とやらを実装することになる。そればかりではない。これまで半ば国是のように取り扱われていた「防衛費GDP1%枠」は放擲され、今後は一挙に防衛費を倍増するのだという。  タカ派路線は外交面でも鮮明だ。ここ十数年、一部では問題視されていたいわゆる「中国交番」問題に関し、国はようやく重い腰をあげ、北京政府に猛烈な抗議を行う予定だという。さらには、政府は年明けから積極的な外交攻勢を重ね、ロシア・中国の二大強国に対する強硬な国際世論を形成しようと西側主要国を飛び回っている。  エネルギー政策でも大転換がおこなわれつつある。国は原発の再稼働を推進するだけでなく、今後は建設後60年を超える老朽原発も利用していく方針を示した。原発のレギュレーションを福島第一原発の核災害の発生以前より緩めるというのだから驚くしかあるまい。  ……と、ここまで書き連ねてきた動きは、先の臨時国会終了後、わずか半月ばかりで岸田政権が実現した諸政策である。こうして書き連ねてみると、専守防衛路線の放棄、防衛費倍増、対中・対露強行路線の採用、西側諸国のオピニオンリーダーとしての動き、原発政策の大転換などと、この半月で岸田政権が達成したあれこれが、これまでの日本の「国是」ともいうべき諸価値をすべて根底から覆す動きであったことがわかるだろう。安倍政権があれほど熱心に唱えていたにもかかわらず8年かけても達成しえなかった「戦後レジュームからの脱却」とやらを、岸田政権はいとも簡単に、わずか半月の間にやってのけてしまったのだ。  岸田政権が誕生した際、一部の好事家たちは、ひさびさの宏池会内閣の誕生を歓迎した。野党支持者の間にさえ、宏池会の伝統を念頭に「岸田政権は安倍・菅政権とは一味違ったリベラルでハト派な政権運営をしてくれるにちがいない」との声があった。しかしそうした期待は見事に裏切られてしまっている。岸田政権が並べ、あるいは達成した政策の大半は、安倍・菅両政権の事績とは比べ物にならないほど、はるか「右」であり「タカ派」な内容のものばかりだ。

安倍・菅政権にあって岸田にないもの

 しかしどうだろう?  もはや「極右内閣」といっていいほどの諸政策を並べ・達成したにもかかわらず、岸田政権の支持率は一向に上昇しない。年明けの一部世論調査では「支持率底打ち」の様子が伝えられているが、その「底打ち」の水準が低すぎる。自民党支持率と内閣支持率の合計、いわゆる「青木数」は、倒閣水準といわれる50ポイントすれすれのところを推移し続けている。  そればかりか、安倍・菅両政権を支えた「岩盤支持層」や「保守層」と呼ばれる人たちは、こぞって岸田政権を批判している。その舌鋒は、野党による政権批判よりもはるかに鋭い。『WiLL』や『Hanada』などといったいわゆる「保守論壇誌」は飽きることなく岸田政権を口汚く罵り続けているし、死後半年も経つのに安倍路線の復活を訴え続けている。ここまで「右」で「タカ派」な政策を並べても、「保守層」や「岩盤支持層」は、岸田政権を「右」だとも「タカ派」だとも認めていないのである。  これは不思議なことではあるまいか。  戦後類を見ないほどの「右」で「タカ派」な政策を並べ実現してみても、頼みの綱の「保守層」は岸田内閣を「右」と認めず、いまだに安倍・菅政権を懐かしんでいる。そして「保守層」とも呼べぬ「中間層」からの岸田政権支持も一向に向上する気配はない。だとすると、具体的な政策以外の面で、安倍・菅政権にはあり、岸田政権にはない「何か」が存在すると考えざるを得まい。そしてその「何か」こそ、「保守層」や「岩盤支持層」と呼ばれる人々をして「ああ、これは右だな」と思わせる要素であるに違いない。  その「何か」とは、畢竟、「下品さ」「女性への嗜虐」ではあるまいか。
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「右にウイングを広げろ」論が筋違いな証左
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月刊日本2023年2月号

特集①岸田総理!日本を戦場にする気か
山崎拓 元防衛庁長官
平沢勝栄 自民党衆議院議員
岩屋 毅 元防衛大臣
春名幹男 ジャーナリスト
川上高司 拓殖大学教授

特別インタビュー
もう一度「保守合同」をやれ!
亀井静香 元衆議院議員

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白井聡 京都精華大学准教授

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