それからほどなくして、トモヤさんは莉子さんの家に引っ越してきた。必要なものは大抵、揃っていたので「荷物は少量の服のみだった」と莉子さんは言う。こうして2人の同棲がスタートしたのだが……。 「はじめはラブラブでした。でも、一緒に暮らして1カ月ほど経った頃から、トモヤの仕事の帰りが徐々に遅くなっていったんです。終電ギリギリで帰宅し、始発で出社。一度も顔を合わせられない日が続きました。そんなある日、トモヤが『会社の近くにホテルを借りたからしばらくそっちに泊まる』と言い出したんです」 　寂しい気持ちはあったが、“仕事なら仕方ない”と莉子さんは自分に言い聞かせた。「休みの日は帰ってきてほしい」と伝えたが、トモヤさんは「なるべく帰ってくるね」と曖昧な返事をしたという。 「ホテル暮らしを始めて、最初のうちは休みの日に帰ってくるときもありましたが、それもだんだんと減っていきました。LINEしても既読にならず、忙しいのかなと。気がつくと夏はとっくに終わり、季節は秋になっていました。トモヤと会わなくなってもう3カ月が経っていて、さすがの私も限界でしたね」 　トモヤさんとは一向に連絡がとれず、不安になった莉子さんはトモヤさんを紹介してくれた友人を頼ることにした。すると、友人から驚くべき事実が伝えられたという。 「私が『トモヤと最近、連絡とっている？』と聞くと、友人は少しビックリした様子で『俺、トモヤから莉子とはもう別れたと聞いたんだけど……』って。それで、『いつ？』とたずねると『3カ月前くらいかな』と言われて唖然としましたね。 　知らぬ間に彼氏と別れたことになっていたんです。ただ、まだトモヤの荷物が家にあることを伝えると、友人は『実はトモヤ、新しい彼女がいるんだよ』と気まずそうに言ってきて……頭の中が真っ白になりましたね」