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「仕事はあるのに人がいない」田舎が抱えるインフラ維持という爆弾/猫山課長

「工事現場はほとんど大手ゼネコンの旗しかない」

 また、仕事があるからといって圏外から人が来るなんてのは甘すぎる予測だ。 「大きな工事現場はほとんど大手ゼネコンの旗しかないじゃないですか。彼らは下請けも連れてくるから、地元業者にはほとんどお金は落とさない。これじゃいけませんよ。外からどんどん進出してきますよ?」  圏外から業者が営業に来て、当地の大型工事の状況を見てそう嘆いていた。言うことは確かに正しい、だが田舎の地元民からすれば言いたいことがある。 「この地域は、道路の維持作業や早朝の道路の除雪作業があやしくなってきているんですよ? それをやってくれる外部業者が、従業員を移住させてまで進出してくれるなら大歓迎ですね」  田舎だろうが都会だろうが、生活の基盤である道路などのインフラの維持管理は死活的に重要だ。日々の幸せはインフラなくしてあり得ない。そして、インフラを支えているのは人間だ。IT化や機械化には限度があり、完全に人力が不要となるにはまだ時間がかかるだろう。  SNSやインターネットサービスは都市部も田舎も変わりはない。ショッピングにしても現物を確認しづらいのをガマンすれば特段の不便はなくなった。しかし、インフラ維持に関してはそうはいかない。

インフラが維持できず「人が住めない地域」が生まれる

 担い手がいないことで維持作業や災害復旧が遅れれば、当たり前だった生活に支障が出る。建設業の人不足は全国的なものだから、この課題は田舎に限らないが、とにかく若い人がいない田舎においてインフラ維持問題はより一層進むことになる。  そうなれば、近い将来「住めない地域」が出てくる。ダムを作るために犠牲になって沈む村とは違い、インフラ維持ができないから閉鎖される地域が出てくる。たった数十人が住む地域のためにかける予算もなく、インフラ維持をしてくれる業者もいなくなるのだから。  ある建設会社の社長とインフラ維持問題について話をしたことがある。その地域において唯一の建設会社で、地域のインフラの維持管理を引き受けている。 「社長、もし後継者が見つからず会社をたたむことになったら、この地域の除雪とかは別の業者でやれるんですか?」  社長は、眼下に伸びていく若干ヒビの入った道路を見ながら返答をした。 「うーん……どうだろうなあ、やれる会社、あるかなあ……」  すぐに「大丈夫、やる会社はあるから」と返答が返ってこない。業界をよく知るからこそ、返すことができないのだ。  田舎は人がいなくなる前に、人が住めなくなるかもしれない。 「人が住めなくなる土地」という概念は、都市部にはどこにもないだろう。だが、同じ国にあって、それに重みを感じながら生きる人たちが、都市からは見えないところに存在しているのだ。
金融機関勤務の現役課長、46歳。本業に勤しみながら「半径5mの見え方を変えるnote作家」として執筆活動を行い、SNSで人気に。所属先金融機関では社員初の副業許可をとりつけ、不動産投資の会社も経営している。noteの投稿以外に音声プラットフォーム「voicy」でも配信を開始。初著書『銀行マンの凄すぎる掟 ―クソ環境サバイバル術』が発売中。Xアカウント (@nekoyamamanager
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