仕事

一流大卒のエリートが3年で退職したワケ。「電話のかけ方から表情まで“管理”されて…」

3.部下の実情に合った指導をするのが育成

 事例の部長はご自身のことを普通の人と思っているのかもしれませんが、私は自分を”普通ではない”と受け止めています。  たとえば20代の頃から現在に至るまで仕事の量は相当に多く、労働時間は長いのですが、それは私自らが自身の成長や成果のために求めたものである以上、それを部下たちに求めることはしません。同じものを求めると、ツライ場合があるかと思います。  かつては、同じレベルのものを部下に求めた時期がありますが、それでは部下は育たないと気がつくようになりました。退職した社員もいます。今は、それぞれの部下の実情に合った指導をするのが育成であり、マネジメントなのだと考えています。  部下たちには機会あるごとに言いますが、皆が同じ山を目指しているわけではないのです。エベレストや富士山など、目標とするのはそれぞれ違います。私も育成においては様々な経験や失敗を経て、このような考えにいたっているのです。

取材を終えて:切ない雰囲気の2年間

退職届 上司には度量なるものが絶対に必要であるのだが、兼ね備えている人は極めて少ないように思える。私は20年程前の30代の頃、すさまじいマイクロマネジメントをする上司に仕えた。当時40代の男性で、部長だった。温厚で、紳士ではあるのだが、部員たちの仕事の隅々にまで指示をして、報告を求める。課長の女性を無視して、自らが課長も兼務してしまうのだ。  課長の部下である私たちは、課長が気の毒だと何度も話した。課長は、部長のマイクロマネジメントに口出しはしなかった。プレイヤーの力量は、課長のほうが数ランク上に見えた。それだけに、切ない雰囲気の2年間だった。  管理職とはいったい何なんだー。大津さんの回答であらためて考え込んだ。 <取材・文/吉田典史> 【大津章敬(おおつあきのり)】 1994年から社会保険労務士として中小企業から大企業まで幅広く、人事労務のコンサルティングに関わる。専門は、企業の人事制度整備・ワークルール策定など人事労務環境整備。著書に『中小企業の「人事評価・賃金制度」つくり方・見直し方』(日本実業出版社)など。全国社会保険労務士会連合会 常任理事
ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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