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ベイスターズの投手陣を陰で支える「かつての中継ぎエース」。豪胆な“ヒゲ魔神”が今の選手に求めるものとは

投手たちに求めるものはシンプル

1998年の遺伝子

1998年、優勝時の胴上げ

 現役時代は堂々とマウンドに上がって黙々と仕事をこなした五十嵐。今の投手たちに求めるものもシンプルだ。 「投手がマウンドに上がったとき、その選手のパフォーマンス……パフォーマンスと言うよりは、マウンドで立っている姿が“しっかり”していればいい、と思っています。この投手ならこう立っていれば普通の状態だ、と。僕はそこを見ています。腕の振りとか、そういうものは技術コーチの仕事。僕らにはそこに至るまでの過程が大事。あくまでマウンドに上がるまでのサポート役ですから」

いかに気持ちが入った状態で投手を送り出せるか

 チームが遠征で横浜を離れる際、五十嵐は帯同せず、次の登板に向けて横須賀の2軍練習場で調整をする先発投手陣と会話を重ねる。 「選手の状態を見極めながら、今日は話して大丈夫かな、今日はやめとこうかな、とか判断しながらね。とくに調子を落としている選手には、自分が現役時代にやられて嫌だったことはしないように心がけています。30分話し込むより、一日3分の立ち話を3日続けてみるとか。 プロ野球選手は周囲のサポートはあれども、全ての責任は自分にある。結果が悪かったら2軍に落とされ、中継ぎから敗戦処理に回されたり。だから投手がマウンドに上がるとき、自分のボールを捕手目がけて思い切り投げ込める状態にして送り出してあげたいんです」  豪胆な“ヒゲ魔神”は繊細な投手を陰で支える縁の下の力持ちとして勝利を追求する。 撮影/小島克典 写真/産経新聞社
1973年、神奈川県生まれ。日大芸術学部卒業後の1997年、横浜ベイスターズに入社、通訳・広報を担当。'02年・新庄剛志の通訳としてMLBサンフランシスコ・ジャイアンツ、'03年ニューヨーク・メッツと契約。その後は通訳、ライター、実業家と幅広く活動。WBCは4大会連続通訳を担当。今回のWBCもメディア通訳を担当した。著書に『大谷翔平 二刀流』(扶桑社)ほか
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