エンタメ

父からはDV、母からは“菜食主義の強要”…「精神を蝕まれた」アイドルが呪縛から解放されるまで

「まぁいいかな」と思えるようになった今

ふかあいちえ氏

「楽しいことばかりではなかった人生」だが、少しだけ前向きになれた

 その不登校で見つけたのは、映像制作という道標だった。 「独学で映像を学び、現在も大学で学びながらショートフィルムの制作をやっています。アイドルというエンターテイメントの世界に飛び込もうと思えたのも、不登校時代の制作欲が基盤にあると思います」  現在はステージに立ちながら、ときに自らの生い立ちについても明るく語ることがあるという。 「『アイドル失格』のメンバーは、抱えているものが大きい子も多いので、それぞれの背景を分かり合えます。たまにSNSのライブなどで自分の話をすると視聴者から相談が来たりするので、『みんないろいろなことを抱えているんだな』と再認識します」  自らが育った環境について、現在のふかあい氏はどのように考えるのか。 「私たちはセルフプロデュースを行うグループなので、自分たちのありのままを自由に発信できます。これまでの人生は決して楽しいことばかりではなく、ときに生きている意味がわからなくなるほど不条理な目にも遭いましたが、それが現在のキャラクターに繋がっていることは事実です。だから、よくないけど、まぁいいかな。そう思えるところまでは、『アイドル失格』に出会えて回復しました」  ふかあい氏はそう言って目を細めた。多感な時期に家族から翻弄され続け、あらゆるものを差し出すことで何とか生き延びたが、感性という翼は守り抜いた。柔くも鋭いその武器で、彼女はこれからも観客を魅了する。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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