更新日:2023年10月07日 19:05
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父の葬式で“喪服を着なかった”母と絶縁…宗教2世の娘が振り返る「母が歪んでしまった理由」

「人を疑うことを知らない」からこそ…

 その大切なものこそ宗教だが、宗教へすがりつくまでには、段階があった。 「母は、たとえば道に迷った人を家にあげたり、障害者を騙って物を売ろうとする人の話を聞いたり、とにかく人を疑うことを知らないような人でした。見も知らない他人を自宅に招き入れることにさほどのハードルがないようにみえました。母と暮らしていると、逆に私が人を警戒しすぎているのではないかと錯覚したほどです。  訪問販売などをはじめとして、母のもとにはいろいろな人が訪ねて来ましたが、それが宗教の勧誘になるまでにはそう時間を要しませんでした。病気や怪我が手かざしで治癒すると謳う宗教にはまったり、連日報道で話題になった宗教に加入していた時期もありますし、マルチ商法に傾倒したこともありました。そして、行き着いた先は、エホバの証人でした

「母への興味関心は薄かった」父の存在

 1992年の輸血拒否事件によってその名前を知る人も多いエホバの証人は、世界中に多くの信者をもつキリスト教系の新宗教である。  水野氏の父親は、妻の行動をどのようにみていたのか。 「父は寡黙ですが自分の考えをしっかり持っている人で、芯のある男性だったと思います。外見はヒッピーのようで、器用貧乏というのでしょうか、さまざまな職を転々としていました。そのたびに経済的な不安にかられた母と諍いになって、父が母を諭すように穏やかに話すのを聞いていました。  ただ、総じて母への興味関心は薄かったと思います。仕事に関しても家庭に関しても、自分が楽しめるかという軸で行動していた感があり、家庭人らしさはない人でした。父の不干渉が、母の信仰が加速した遠因にはなったかもしれません」  その父親の死をきっかけに、水野氏と母親は決裂する。
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決裂したのは宗教のせいだけではない?
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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