更新日:2023年10月07日 19:05
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父の葬式で“喪服を着なかった”母と絶縁…宗教2世の娘が振り返る「母が歪んでしまった理由」

たびたび「男の子に生まれたらよかったのにね」と…

「祖父の家庭内暴力などが原因で祖母は出ていったと聞いていますが、歪な性癖を持っていた可能性は否定できないと思います。また人格的にも、祖父は嫁をいびって鬱病にさせるなど、問題のある人だったとのちにわかりました。祖父はすでに他界していますが、私は見舞いにも葬式にも行っていません。  祖父からの性的いやがらせと思われる行為については、母を信用していなかったので報告していませんが、私のなかでずっと解決しないまま杭のように心から抜けない出来事のひとつです。そういえば、母が私にたびたび『男の子に生まれたらよかったのにね』とこぼしていたのも、意味があるように思えます」

子供を持つ選択肢を排除したのは“後遺症”

 家族の姿から目を背けるように信仰に身を捧げ、絶縁した母親。一時は宗教の存在を憎しみ続けたという水野氏は、現在このように考えているという。 「私にとって家庭は安心感を得られる場所ではなく、母から愛情と呼べるものを受けた自覚もないまま育ちました。ずっとその根源には宗教があって、宗教によって私たちの家族は不幸になったと思っていましたし、そういう側面はあるでしょう。しかし、より根本には、母自身が宗教に頼らなければ生きていけないほどの傷を負って生活してきた歴史があると思います。  母は私にとっては加害者ですが、別の誰かの被害者かもしれない。そして何より、宗教2世が世間の耳目を集めるにつれ、似た思いを持つ人が大勢いることもわかりました。  こうした環境で育ったことが原因のすべてではないかもしれないけど、私は結婚はしているものの、子どもを持つ選択肢は最初から排除しました。自分と同じような子を増やしてしまうのではないかという不安が大きいからです。それは私の後遺症だと思うんです」  懊悩した過去を理性的に分析し、自分を翻弄した母親や宗教の背景にまで手を伸ばして向き合う女性の、強靭にも脆弱にもみえる本音がそこにはあった。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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