更新日:2023年10月05日 17:18
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「いじめられるのは恥ずかしいこと」…東大卒の両親から受けた“教育虐待”の実態を当事者が振り返る

 可愛らしいフリルがついたワンピースにランドセル。ピンク色に統一されたファッションで、みずき氏(27歳)は筆者のもとに訪れた。一部メディアなどでは“女装家”などと評されるが、本人は「当然のように男性として扱われるのは好かない」と話す。  人気番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)への出演経験もあり、YouTubeなどにも活動の場を広げるインフルエンサーだ。  奇抜なファッションもさることながら、学歴にも注目が集まる。神奈川県の名門・聖光学院中高を経て、東京大学卒。両親も東大卒。安易に「サラブレッド」と口をついで出そうになるが、「教育虐待の賜物」と言うだけあって、その禍根は決して無視できる種類のものではないようだ。
みずき氏

みずき氏

「母親とは心が通わない」諦めた出来事

特に母親はかなりの見栄っ張りだと思います。子どもをいい学校へ入れたり尊敬される職業に就かせることが、自分のステータスと信じているように私にはみえました」  あまりにステレオタイプな価値観だが、みずき氏が強くそう感じたエピソードはなかなか興味深い。 「中学校1~2年生の頃の話です。私が変わり者なのは確かですが、母はそれを『学校でいじめられている』と解釈したらしいのです。そんな事実はありません。ところが、ありもしないイジメは彼女の脳内で“真実”になってしまい、私に『いじめられるために私たちは学費を支払ってるんじゃないんだ』と言い放ちました。  仮に子どもがいじめられていたとしたら、通常、親は子どもの精神面を心配したり、学校や加害者に憤るものだと思います。しかし母のなかでは『学校でいじめられるような立ち位置にいることが恥ずかしい』ということのようです。そのときに、彼女とは心が通わないと諦めました」

教育虐待は主に母から…その理由は?

 みずき氏の母親は、中学受験界隈では知らぬ者のいない、日本中の才女をかき集めたような名門校を卒業している。それだけにプライドも高かった。そもそも結婚までの経緯に不満があったのではないか、とみずき氏は推測する。 「母が私を身ごもったとき、父は学部4年生だったらしいのです。父も母も研究職を志していましたが、母は『子どもを生むなら大学院は諦めて』と伝えたと言います。ところが、父は大学院へ進学し、現在は教授職です。母は公務員になりました。出産直後から、2人の間には諍いが絶えなかったらしいですね。 また、母は東京の超エリート校出身ですが、父は地方の出身です。教育虐待は主に母からのもので、父は子どもの教育そのものにあまり関心がなかったのかもしれません」
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父は父で厳しかった記憶が…
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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