更新日:2023年10月11日 16:30
デジタル

私を「売れ残りおばさん」とSNSで叩いた“誹謗中傷の送り主”と会ってみた。彼の主張に正義はあるのか

本人は「良いことをしていると思っている」

 最後に、話す中で、どうしても気になったことを聞いてみた。 ――加害者にはどんな人が多いですか? 「男女比は変わらないです。ただ、執拗に繰り返している人は女性のほうが多い印象があります。女性から女性に、ですね」 ――どのような理由だと思いますか? 「共通するのは、他人に罰を与えたいという感覚でやっていること。本人は、良いことをしていると思っている。他人に制裁を与えたい欲求って、男女とももの凄く強いんです。ただ、女性はそのなかでもネットの罰という手段を選択しがちかと感じます」 ――加害者たちは、実際に訴えられたらどのような反応を示しますか? 「開示請求された後でも『自分は正しいことをやった』と粘る人はほとんどいません。ビビっちゃう人が多いですね」

他人を殴れば傷害罪、名誉を傷つけるのも犯罪

ユズカ

取材は藤吉弁護士のオフィスで行われた

――誹謗中傷はなくなると思いますか? 「なくならないでしょうね。他人を制裁したいという欲望って本能だから。減らすためには、罰則を強化するしかないでしょう。誹謗中傷の相談は泣き寝入りする人も多いです。被害に遭った人が大金と時間をかけなきゃいけないのは違和感があります」 ――最後に、「俺にも理由がある」と話す加害者について、情状酌量の余地はあると思いますか? 「ないでしょうね。理由は関係ない。いくら自分が何か被害に遭っていても、全然関係ない人に被害を与える理由にならない。他人を殴れば傷害罪です。それと同じように、他人の名誉を傷つけても犯罪になる。現代には、身体となると分かるのに、名誉となると分からない人が多いなと感じます」 ==================  誰にだって、どうしようもない夜はある。世の中は不平等だから、そのアンフェアさに誰かを罵りたくなるときもあるだろう。だけどそんな時は思い出してほしい。言葉は、間接的に人を殴ることも、抱きしめることもできるのだ。  誹謗中傷は人をも殺すことがあるということを、私たちはいい加減、理解しなければならない。開示請求のハードルは、思った以上に低い。誰かを傷つける言葉は、相手のためにも、自分のためにも、胸にしまっておいたほうが良さそうだ。 <TEXT/yuzuka> 【藤吉修崇】 弁護士法人ATB 代表弁護士。東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒業。インターネット上の誹謗中傷問題を多く扱い、これまで2000人以上の法律相談を受けてきた。登録者16万人を超える人気YouTube「二番煎じと言われても」も更新中
エッセイスト。精神科・美容外科の元看護師でもある。著書に『埋まらないよ、そんな男じゃ。モノクロな世界は「誰かのための人生」を終わらせることで動きだす。』『君なら、越えられる。涙が止まらない、こんなどうしようもない夜も』など。Twitter:@yuzuka_tecpizza
1
2
3
4
5
6
おすすめ記事
ハッシュタグ