「あんな奴ら消えてしまえばいい」DV加害者への厳しい声も。“更生支援の難しさ”を女性理事長に聞く
欲望が渦巻く新宿歌舞伎町。トー横キッズにホス狂い、大久保公園のたちんぼ。危険と隣あわせの夜の世界で刹那的に生きている彼女たちは当然事件に巻き込まれることも多く、その度に世間からは「自業自得だ」と批判を浴びせられる対象となる。
@yuzuka_tecpizza)が取材する(以下、yuzuka寄稿)。
子供たちの取材を重ねるたびに直面するのが、彼女たちの置かれた複雑な家庭環境だ。前回行った東京都福祉局のインタビューでも、子供への虐待相談件数は、年々増え続けていることが浮き彫りになった。実際、“不良行為を行う可能性のある子供”が入所するとされる自立支援施設のみに絞っても、実際に入所している半数の子供たちが、何らかの虐待を経験している。子供たちが行き場をなくし、非行に走る背景には、不適切な養育環境が関わっているのに間違いはない。
どうして家庭内で暴力が起こるのか。それを防ぐ方法や対策はないのか。そんな疑問に答えてくれたのがNPO法人女性・人権支援センターステップ理事長である栗原加代美(くりはらかよみ)さんだ。彼女は全国でも珍しい、DV被害者・加害者の更生支援を15年以上にわたって行なっている。
DVの被害者支援をしている団体を目にすることはあっても、加害者側の更生を支援している団体と出会う機会は少なかった。それどころか、虐待やDVの加害者は世間から忌み嫌われ、「変わるはずがない」と突き放されている印象が強い。しかし、DVの加害者・被害者両方に寄り添ってきた栗原さんは、はっきりと「加害者は変えることができる」と言い切ると同時に、「加害者を変えなければ、この問題は終わらない」と話すのだ。
自身も暴力のある家庭で育ったという栗原さん。どうして彼女は被害者支援だけではなく、加害者更生支援に力を入れているのか。DVの加害者になってしまう理由や、本当に更生することはできるのかという部分にも触れながら話を聞いた。
――ステップでは、加害者の更生支援に力を入れられていますよね。被害者支援は理解できますが、加害者の更生を支援する必要はあるのでしょうか?
栗原加代美(以下、栗原):「加害者なんてなんで支援するんだ」「あんな奴らは消えてしまえばいい」というようなことを言われることがよくありますが、被害者の支援を考えると、加害者の変化、更生への支援は絶対に必要なんです。
ステップの働きはよく、サファリパークに例えられます。バスに乗るのは被害者で、彼女たちは地域も友達も学校も仕事も、全てを捨ててバスに乗り込みます。しかしバスの外には野放し状態の加害者である、熊やライオンが放置されたままでした。
彼らは、被害者が逃げても、第2、第3の獲物を見つけます。ステップに被害者が逃げて来ている間に愛人を作り、その愛人に対しても同じように暴力を振るっているケースがあるほどです。そのままにしておくと、次々と被害者を作っていき、原因の根本的な解決にはなりません。
また、バスに乗り込んでいる被害者自身も、加害者が熊やライオンのままである限り、いくら離婚して逃げ出しても、永遠にバスからは降りられません。放っておいた加害者は、執着からストーカーになることも多いからです。実際に、そういう事件がたくさんおきていますよね。だから、本当の意味で被害者を救うためには、あの熊やライオンを、猫やウサギに変える必要があるのです。
彼女たちは一体どうしてそこにいて、どう生きているのか。元夜職、元看護師の肩書を持つエッセイストでライターのyuzuka(
15年以上にわたるDV加害者の更生支援
DV加害者は第2、第3の獲物を見つける
エッセイスト。精神科・美容外科の元看護師でもある。著書に『埋まらないよ、そんな男じゃ。モノクロな世界は「誰かのための人生」を終わらせることで動きだす。』『君なら、越えられる。涙が止まらない、こんなどうしようもない夜も』など。Twitter:@yuzuka_tecpizza
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