「障がい者雇用のしわ寄せを受けて…」新卒2年目社員の嘆きを人事のプロはどう見る
人事労務に関わり、30年を超えるキャリアの人事コンサルタント・川口雅裕さんに取材を試みた(以下は、川口さんによる取材への回答)。
人事コンサルタントとしてよく見聞きする事例です。まず、1980~1990年代に勤務した大企業のことを思い起こしました。業績は大変に良かったのですが、障がい者雇用には熱心ではなかったのです。
人事部の課長をしていた時に担当役員から呼ばれ、「急いで障がい者を社員として雇うように」と指示を受けました。都内の大企業で、障がい者の雇用率がワースト10となっている会社の役員が、東京都から呼び出しを受け、「現在のままならば、社名の公表もあり得る」と言われたようなのです。
それで、私たち人事部員が障がい者の方との集団面接会に参加したり、職業訓練校を訪ねたりして採用しました。主に軽~中度の身体障がい者の方を正社員として雇い、総務や経理など管理部門を中心に配属したのです。
初期の2年ほどは会社として慣れないこともあり、トラブルも起きました。早いうちに辞めていく人もいました。ところが、1年目から障がい者からも、健常者の社員からも評判のいい管理職がいました。当時40代後半の女性で、10人程の部署のマネージャーです。
まず10人ほどの部下の仕事をすべて洗い出し、書き出したようです。次に、健常者の社員がする事務処理などのルーティンワークを障がいをお持ちの40代後半の女性に依頼したのです。この方は左半身に軽度~中度(4級)の障がいがありました。
仕事の大胆な組み直しにより、健常者の社員は本来の業務に専念できるし、障がい者の方に感謝もするようになったのです。職場のコミュニケーションがよくなり、楽しい雰囲気になったようです。障がい者の方は、その後も長く勤務していました。
ここには、工夫があります。ポイントは社員の担当する仕事に着眼し、役割を変えるほどに大胆に変えてしまったことです。その際、仕事の中身や量、レベルは可能な限り明確に、具体的にしたのです。今回の事例では、管理職がその意味での工夫をしていたのかどうか。仮にしていないならば、そこにまず、問題があったのではないでしょうか。
1.受け入れるための工夫をしているか?
管理職が行った「大胆な組み直し」
ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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