仕事

三井不動産、JICA、外務省出身の「30代ハイスペ女子」がスリランカで起業。“ルッキズム”と闘う理由

「セルフラブ」の精神を日本に届ける仕組み

ケルナ

前川裕奈さん ©Akiko Ishino / Studio Fort

――そのような容姿に対する考え方の変化が起業につながったのですか。 前川:はい。大学院を修了してJICAに1年弱勤めた後、外務省の試験を受けてスリランカに駐在し、現地の女性に刺激を受けました。スリランカの民族衣装であるサリーを着た女性たちが細かろうが太かろうが体型に関係なく、本当にキラキラして美しい。彼女たちの内なる自信からくる美しさに感動したんです。そんな彼女たちの姿からセルフラブ(ありのままの自分を受け入れ、愛してあげること)の精神を学びました。  その後、外務省の専門調査員として、スリランカの女性の職業訓練や雇用問題に携わりました。そこで、国際協力という枠組みの中で、働きたいけど働けない現地の女性たちのニーズに応えながら、前向きなセルフラブに溢れる彼女たちから日本にセルフラブを発信するスキームができるのでは……と、思いついたんです。  発展途上国で作られた製品を売っているブランドは世界にたくさんありますが、「これを買うことで生産国を援助できます」といった一方的な支援が多いように思います。でも、先進国と発展途上国の間に優劣があるわけではない。それぞれが援助できることを「交換」し合える仕組みができればよいのではないかと。  そういった観点から、スリランカの女性の雇用をサポートし、日本に「自分を愛し、人を批判しない」という心を伝えることでお互いを支援し合うというコンセプトでフィットネスウェアのブランド「kelluna.(ケルナ)」を立ち上げました。

売上とメッセージの塩梅に悩みも

ケルナ

現地スタッフ(写真左)とともにkelluna.のウェアを着用して

――社会課題に取り組みつつ、資本市場で会社として売上を出していくことには難しさもあるのではないでしょうか。 前川:ビジネスを存続するためには当然、売上が必要ですし、スタッフに給与を払わなければなりません。でも、そこに焦点を当て過ぎると、私たちが伝えたかったメッセージや世界観が払拭されてしまうし、一方でこだわりが強くなり過ぎても一部の人にしか理解されなくなってしまう。その塩梅が、難しいですね。  売上を急速に伸ばすことによって原産国に利益を還元できるという考え方もあります。でも、私は、売上にフォーカスするのではなく、スリランカの現地の人の手で作っていることに共感してくださっているユーザーの思いを大事にしていきたいと考えています。
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ゴミ山崩落事故現場を目にした経験
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大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle

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