三井不動産、JICA、外務省出身の「30代ハイスペ女子」がスリランカで起業。“ルッキズム”と闘う理由
長い髪と力強い目が印象的な前川裕奈さん(34歳)。慶應大学法学部卒、早稲田大学院で修士号取得、三井不動産や国際協力機構(JICA)勤務を経て外務省の専門調査員として海外駐在するなど煌びやかな経歴を持つ。
――著書『そのカワイイは誰のため? ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)の表紙を見た時、「なぜ、この綺麗な人がルッキズムと戦っているの?」という疑問を持ちました。
前川裕奈(以下、前川):私はプラスサイズ体型ではないし、外傷があるわけでもありません。むしろ、「恵まれた環境で育ってきたんじゃないの?」と言われがち。でも、私のように、パッと見ただけではわからないけれど容姿について悩んでいる人も多い。
私自身、20年以上ルッキズム問題に苦しんできました。そんな私だからこそ伝えられる、ルッキズム問題の根深さを伝えたいと思い、起業をして、書籍などを通じて発信しています。
――「ルッキズム」という言葉はここ数年で社会に浸透していますが、前川さんが考える「ルッキズム」問題とは?
前川:ルッキズムの話をすると一定数の人が「そうは言っても、可愛い彼女がいいよね」とか「なりたい理想像はあるよね」と言います。好みや理想を持つ感性は尊いものです。なので、私はそれらをなくそうと言っているのではありません。私にも“推し”がいるし、「こうなりたい」という理想像もあります。
ただ、それが画一的なものになると、みんなが同じ定義や基準で人や物事を判断するようになり、それに囚われるようになる。その画一的な基準や見方が人々を苦しめる「ルッキズム」問題につながると考えています。
――自身の容姿を気にするようになったきっかけは?
前川:父親の仕事の都合で、イギリスとオランダで幼少期を過ごし、小学校5年生の時に帰国しました。日本の小学校に通い始めた当初、周囲と体型や服装が異なり、クラスで浮いた存在だったんです。当時、欧米では、上半身は短めのセーター、下半身はスパッツ、今でいうレギンスを履くスタイルが普通でした。
でも、その格好は日本の小学生の目には異様に映ったようで、「デブだからスパッツしか入らないんだろう」と言われ、「デブスパッツ」というあだ名をつけられました。そのあだ名で呼ばれたことがきっかけで、容姿に対するコンプレックスが発動……。中高時代、友人と楽しく過ごすなかでも心のどこかで自分は「負け組」なんだと思い、いわゆる細くて色白な子を見ては「いいなぁ」と羨ましがっていました。
そんな私にも大学に入ってから彼氏ができ、恋愛にのめり込んでいきました。交際が順調なうちはよかったのですが、進路の関係で別れることに。大学生活の大部分を占めていた彼を失ったことで、心を病んでしまい、初めて食欲が失せる経験をしました。そこで初めて「食べなければやせる」ということを体感したんです。
そんな華やかさとは裏腹に、20代の頃には過食と拒食や過酷なダイエットを繰り返し、「やせなきゃ」という思いに縛られていた。その経験から、駐在先のスリランカでルッキズム(外見至上主義)を問題提起したいと考え、退職後にフィットネスウェアのブランド「kelluna.(ケルナ)」を立ち上げた。
彼女がルッキズムと戦い続けるのは、なぜなのか。その理由を探った。
「恵まれている」と見られるけれど
自分は「負け組」なんだと思う幼少期
大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle
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