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住民がたった1人でも「死ぬまで故郷にいたい」福島県、消滅寸前の限界集落にくらす人々

集落を切り捨てることは日本の崩壊を招く

限界集落

日本の出生数・合計特殊出生率の推移。※出典/人口動態統計(厚生労働省)をもとに作成

「過疎集落は消滅する」と言われて久しいが、本当だろうか。限界集落に関する研究を行っている社会学者・山下祐介氏は、「高齢化が問題なのではなく、出生数の減少がいちばんの問題です」と語る。 「第2次ベビーブーム以降、出生数は減少し続けています。ですが、過疎地の人口流出ばかりが問題とされている。そうではなくて、出生数が減り、全体の人口のバランスが崩れていることが問題なのです」  そもそも「集落消滅」論はなぜ広まったのか。 「’14年に日本創生会議が発表した『増田レポート』が原因でしょう。’40年までに半数の自治体が消滅すると危機を煽り、メディアもその流れに乗ってしまって“末端の集落は消滅する”かのように扱った」  この“消滅やむなし”の論調が日本社会を崩壊させると同氏は言う。 「人口が減っていくと社会は当然不安定になる。そのなかで、末端の少人数の集落は税金を蝕んでいるから排除すればいいという優生思想が根付いてしまうことが危険。『増田レポート』から10年たちましたが、当時消滅すると言われていた集落のほとんどがしぶとく生き残っているのが実情です」

“限界集落はそう簡単に消滅しない”

 集落が存続する背景には、’10年代以降の団塊世代のUターンや、若い世代の地方に対する価値観の変化があるという。 「コロナ禍でリモートワークが定着したことで、居住地の選択肢も広がりました。例えば、『こんな田舎暮らしをしたい』と思ったら、実現できる制度が自治体に増えていることも後押しになっています」  今後は地方自治体が中心となってルールや制度を整備し、限界集落をもっと活用する方法を考えるべきだと訴える。 「地域おこし協力隊制度も定着しつつありますし、各自治体で成功・失敗を含めた情報の共有ができてくるとさらに有効活用できると思います。そうやって社会全体で集落を維持する仕組みがある限り、限界集落はそう簡単に消滅しません」
限界集落

社会学者・山下祐介氏

【社会学者・山下祐介氏】 東京都立大学教授。専門分野は地域社会学や農村社会学などで、過疎・過密問題を研究。著書に『限界集落の真実』(ちくま新書)など 取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
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