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住民がたった1人でも「死ぬまで故郷にいたい」福島県、消滅寸前の限界集落にくらす人々

近くの町まで徒歩2時間。車がないと何もできない

限界集落

自宅前で談笑する菊池さん(左)と髙橋さん。知り合って20年以上たつ。互いがセーフティネットの役割を果たしている。「お互いに助け合ってなんとか生きてきた」「限界集落の大変さは交通の不便さだよ」

 続いて訪ねたのは、中ノ山集落から車で10分ほど離れた場所にある上平集落。県道から細い山道を上がっていくと、「上平」の小さな標識を発見。さらに細い道を進むと、古い家屋が数軒立ち並ぶ場所に出た。住民台帳は2人。そのうちの一人、菊池庄吉さん(仮名・73歳)に話を聞いた。10年ほど前に離婚してから一人で暮らしているという。 「大変なのは交通の不便さ。俺は目の病気になって車を手放したから、食材の買い出しや風呂に行ったりするのに友達を頼らないといけないんだ」  人通りはほとんどなく、移動スーパーも来ないエリア。だから近くの町まで2時間をかけて歩くこともあるという。  そんな菊池さんを助けているのが、近くに住む友人の髙橋次郎さん(仮名・80歳)。会津美里町は豪雪地帯に指定されている。家の屋根や壁をトタンで覆うのは雪対策だそう。 「役場は県道なら除雪してくれるが家の前の道はやってくれない。朝から晩まで雪かきする日もあるよ」(髙橋さん)

「子供にだけは迷惑をかけたくない」

限界集落

冬季に雪が積もった上平集落。雪で屋根が陥没してしまうことも多いそうで、修理はすべて自分たちで行う(画像提供/AIZUチャンネル)

 隣で聞いていた菊池さんが「ありがとうな」と言えば、髙橋さんも「お互いさまだべ」と返す。それが2人の関係だ。  そんな菊池さんは取材中しきりに「子供にだけは迷惑をかけたくない」と繰り返した。 「本当は娘家族と一緒に住みたいんだ。けど、まだ孫も小さいし、邪魔はできないよ」  取材後、2人は「風呂入りに行くか」「んだな」と言って車で去っていった。過疎地の住民トラブルがよく話題に上るが、「密な関係」は本来支え合うためにあるのだろう。
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集落を切り捨てることは日本の崩壊を招く
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