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住民がたった1人でも「死ぬまで故郷にいたい」福島県、消滅寸前の限界集落にくらす人々

 日本の人口減少、出生数低下が加速する一方で、影響はことさら地方の集落で深刻化。限界集落どころか無人集落すら存在する。今そこで何が起きているのか。これからどうなるのか。“超”限界集落に足を運んだ。

高齢化率100%の集落を支えるのは“人と人との絆”

限界集落

鎮守神を祀り、中ノ山集落の住民らで守ってきたという山王神社。手入れする人がいなくなり荒れていた

 福島県の会津美里町の人口は1万8610人で高齢化率は41%。会津盆地の南西に位置するその町には高齢化率100%の超限界集落も少なくない。今回訪ねた中ノ山集落と上平集落がそうだ。  会津高田駅から車で県道53号線を山中に30分ほど進むと、中ノ山集落に到着する。住民台帳では2人になっているが、24戸ほどの家屋は人の気配がない。  軽トラックが停まっている一軒を見つけインターホンを押すと、高齢男性が出てきた。少し耳が聞こえづらいようで声を張って取材をお願いしてみたが、「そういうのは受けねえよ」とにべもなく断られてしまった。

「死ぬまで生まれ故郷の中ノ山にいたい」

限界集落

中ノ山集落の空き家の周りに猫たちがいた。ご飯を十分に食べていないのか痩せ細っていた

 その後もあたりを見て回ったが、住民は彼一人だけのようだった。隣の集落の住人から、その彼の2つ上の兄・宗像豊巳さん(72歳)を紹介してもらい、電話で話を聞くことができた。 「弟の耳の調子が悪くなったのは7年前に女房を亡くしてからだな。中ノ山集落はもともと20人ぐらい住んでいたけど、亡くなったり施設に入ったりして、昨年に弟の虎雄だけになっちまったよ」  虎雄さんは年金と簡単な建築仕事を請け負いながら生活しているという。現在、兄の豊巳さんは福島市内で娘家族と同居しているが、月1回は弟に会うため中ノ山集落まで2時間かけて通っているそう。 「酒とつまみを持っていって、一緒に飲みながらたわいもない話をして1泊する。虎雄は子供がいないから、それが俺ら兄弟の楽しみになってんだ」  ただ、「これ以上耳が悪くなったら、こっちの家に来てほしい気持ちはあるけどな」と本音を漏らす豊巳さん。 「本人は死ぬまで生まれ故郷の中ノ山にいたいと言っている。今の生活とその思いをできる限り尊重してやりたい」  距離は離れていても家族である。そんな絆で保たれていく集落だってあるのだ。
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近くの町まで徒歩2時間。車がないと何もできない
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