靴の専門家“シューフィッター”が選ぶ「2023年の革靴ベストバイ」3足
こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
最近では、「履きづらい」「値段が高い」「雨天で履けない」と敬遠されがちな革靴ですが、どれほどオフィスカジュアルが浸透しても社会人として働く以上、縁が切れません。そこで、最近の革靴事情に疎い方や、見分けがつかないので適当に購入しているという方に、お勧めしたいベストバイ3足を紹介します。上記、三重苦の壁をすべてぶち抜いた逸品たち。第一位はむしろ、革靴好きには見つかってほしくないので、好事家はスルーでOKです!
ABCマートのオリジナルブランドのホーキンス「マジ軽ローファー」(6490円)。販売店では学生用のコーナーに置かれていますが、王道デザインなので大人でも履くことができます。学生時代に履いたローファーが足に合わず、「痛くて嫌いになった」という方は数知れず。今でもローファー業界最大手の靴は、残念ながら昭和からなにも変わっていません。罪作りですね。「学校指定だから」という理由で、メーカーも消費者も、革靴なんてこんなもんでしょ、とあきらめていたのが原因ですが、そんなローファー界に革命を起こした一足です。
履いてもまったく痛くなりません。かつ、パカパカ脱げない。見た目は業界最大手の某ローファーと瓜二つなのですが、似てるのは表面だけ。カカトやベロ、履き口周りにぐるっとスポンジが内蔵されているので靴ずれとは無縁です。底も重い合成ゴムではなく、耐久性に優れたEVAを使用。EVAはスニーカーに使われる発泡スポンジで、クッションとグリップは完全にハイテク仕様です。
しかも、価格も某大手メーカーより1000円以上も安いので、大人はもちろん、はじめて革靴を履かされる学生にも最適な1足です。派手な宣伝はしていませんが、あまりの履きやすさに、2022年春、2023年夏と全国のABCマートでは品切れを起こすなど定番化しつつあります。
国内最大手のスポーツメーカー「アシックス」の手掛ける革靴「テクシーリュクス」です。完全防水で1万6500円という破格には驚くしかありません。数年前までは、テクシーリュクスの作りは「安かろう、悪かろう」の典型でした。どこまでいっても「スニーカーのついで」といったノリしか感じられず、硬い革、すぐに減る底、履き口のバランスの悪さなど、足を入れる気にすらならなかったのです。ところが、コロナ後から状況は一変、スポーツメーカーが本気を出すとここまでやるのか……というくらい見事に化けました。今ではメガスポーツ店から百貨店の最前列にまで置かれるように。もちろん、モノが圧倒的にいいからです。ちなみにAmazonのビジネスシューズランキング1位も2年連続で獲得しています。
実は、靴業界では20年以上前から「スポーツメーカーが革靴を作り出したらヤバい」と、実しやかに語られていました。持っている足のデータ量と開発資金力が段違いだからです。令和の今になって「ついにその時代が来た」という感じ。その典型が、完全防水のゴアテックス仕様を施した一足です。ゴアテックスはどこのメーカーであろうが、必ず米・ゴアテックス社の試験をクリアしないと生産は許されません。必然的に価格は高くなり、どう安く見積もっても3万~4万円はします。加えて、技術力を要するので、生産体制も大手メーカーに限られます。そこに市場価格の半値で投入されたのがテクシーリュクス。売り場を完全に制圧し、靴メーカーは戦意喪失でしょう。
私は、長年靴のリペアに従事してきましたが、スポーツメーカーならではの圧倒的な耐久性で、カカト・ソール周りの修理はほとんどしたことがありません。底材の材料がいいだけではなく、足にフィットして無駄なブレが起きないので、結果的に壊れづらいからです。ごくたまにリペアに持ってこられたお客様も「アシックスの靴とは知らなかった」と口をそろえていたのが印象的でした。この差は今後さらに開く一方でしょう。
第3位:「ローファー=痛い」の常識をひっくり返した逸品
第2位:「スポーツメーカーが本気をだした!」
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こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」
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