更新日:2024年01月29日 14:39
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町田のアトリエを襲った“大規模火災”現場を訪問。アート作品消失でも「不思議と悲壮感はない」

民事に勝訴しても払ってくれない可能性大

火災した400平米の全貌。元々は鶏舎だったことから「トリゴヤ」と命名していた。東間さんからの写真提供

――保険は入っていたんですか? 東間:この場所は宅地開発ができない市街化調整区域に指定されていて、僕らも住居ではなく倉庫のような扱いの場所として借りていたこともあり、火災保険などは入っていませんでした。似たような契約のアトリエやスタジオは少なくないと思います。火災の翌日、大家さんや何人かのメンバーと、本人と警察、消防が行う現場検証に立ち会ったんですが、日本は失火責任法という法律があり、重度の過失が無ければ延焼被害への民事賠償は請求できないし、刑事罰の方は罰金を出火者と司法機関がやり取りするだけで、警察が進捗や結果を教えてくれることもありません。 ――では、火事を起こした当人からお金を取ることは難しいってことですか? 東間:大家さんが原状回復費用の民事裁判を起こすしかありませんが、過失の度合いや相手方の支払い能力の問題などで争うことが多く、弁護士に聞いても火災で賠償金を支払ってもらうのはかなりハードルが高いらしいです。もちろん貰い火の賠償なんてのは論外と言うか。「だから火災保険があるんですよ」と。

罹災ゴミは無料!だが運ぶトラックがない

撤去したゴミを仕分けしてガラ袋に詰めた東間氏

――火災の後、大家さんとの話し合いはどのようなことになっていますか? 東間:僕たちが自分たちの荷物に関係した瓦礫やゴミを全部片付けて、その後は大家さんが重機を入れて更地にする予定になっています。そこでまた契約するかどうかを話し合うということになっています。大家さんも同情してくれてはいますが、どうなるかは分かりません。 ――今ある火災から出たゴミってものすごい量じゃないですか。これを片付けるのは相当大変ですよね。 東間:片付け作業自体は順調に進んでいます。作家仲間やギャラリーのお客さんを中心にボランティアにも参加してもらったので、瓦礫を撤去してゴミを仕分け、ガラ袋にまとめています。あとはトラックにポンポン積め込むだけです。今の問題は、トラックがないことです。 産廃業者に頼むと、いきなり見積もりが100万円単位とかになっちゃうから、トラックとドライバーだけ頼みたいんですよね。火事で出たゴミは震災と同じように罹災ゴミ扱いになるので、職員さんが一度現地確認したあと、町田のバイオエネルギーセンターに持っていけば減免ないし無料で引き取ってくれるようです。 ――罹災ゴミは無料なんですね!出火させた方は、片付けに参加してますか? 東間:来てないですね……。申し訳ないとは言ってましたが。 ――今回の火事でいちばんショックだったことはなんですか? 東間:やっぱり今月から予定していた展示が全て白紙になってしまったことですね。今後は、ゴミを全部出して更地にしてから大家さんと話し合うことになっています。もしまたこの場所を借してもらえるとしたら、クラウドファンディングでもなんでもやって再建しようと思っています。 焼け跡 その後、知り合いのツテでトラックを借りることができたので、なんとかゴミを運ぶ目処がたったという。東間さん自身、思っていたより悲壮感がなかったことが唯一の救いだが、隣家の失火が原因であっても、長期間にわたって後処理に追われてしまう。乾燥している時期の火の取り扱いには、くれぐれも注意したいものだ。 【東間嶺】 美術作家、日雇フォトグラファー&ライター。オルタナティブホッタテ小屋「ナミイタ」主宰。現在火災が起きたアトリエ「トリゴヤ」と「ナミイタ」では、瓦礫の撤去、再建について協力をお願いしている。また今後は、燃え残った作品を使った展示も計画中。「ナミイタ Nami Ita」note <取材・文・撮影/谷亜ヒロコ>
放送作家を経てフリーライター&作詞家として活動中。好きなテレビ番組は「ザ・ノンフィクション」、好きなラジオはTBSラジオ、得意料理は春巻き。得意領域はカルチャー、音楽、芸能、住宅、美容など。Twitter:@rokohiroko
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