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日本人選手の通訳は「パシリ」。大谷と水原氏の関係、ギャンブル依存症につきまとう「嘘」

「アメリカでも尊敬される社会のロールモデル」になってほしい

 個人的な考えを述べると、大谷には今回の一件をバネにして今後、単なる「世界最高の野球選手」ではなく「アメリカでも尊敬される社会のロールモデル」になってほしい。たとえば大谷が今後、ギャンブル依存症患者とその家族を支援するチャリティ活動でも始めたら、アメリカのメディアは絶賛するだろう。  もちろん大谷の本業は野球であり、一番は野球で結果を残すことだ。また、もし大谷が会見で語った内容が真実なら、彼は大規模な詐欺の被害者だ。10年7億ドル(約1015億円)という超巨大契約の1年目が始まった直後、ただでさえプレッシャーのかかる時期に信頼する人間に裏切られ、さらに日米のメディアに追い回されている彼の心労は計り知れない。今はとてもチャリティ活動なんて考えられる状況ではないだろう。  それでも今後、大谷がまずはフィールド上で活躍し、その上で自身の体験を活かした何らかの社会的な活動を始めることを、個人的には勝手に期待してしまう。アメリカの一流アスリートは、優れた競技者であるだけでなく社会のロールモデルであることを求められる。だから多くの選手は、貧困や教育、医療などの社会問題にそれぞれのやり方でコミットする。  繰り返しになるが今、この状況で大谷に多くを求めるのは酷だ。まずは新しいシーズン、なるべく余計なストレスがない状態でプレーできることが第一だ。その上で今後、大谷が今回の一件をバネにしてこれまで以上に社会のロールモデルとなり得るという可能性は、せめてもの救いではないだろうか。10年契約の1年目がたった今、始まったばかりなのだ。 取材・文・撮影/内野宗治
(うちの むねはる)ライター/1986年生まれ、東京都出身。国際基督教大学教養学部を卒業後、コンサルティング会社勤務を経て、フリーランスライターとして活動。「日刊SPA!」『月刊スラッガー』「MLB.JP(メジャーリーグ公式サイト日本語版)」など各種媒体に、MLBの取材記事などを寄稿。その後、「スポーティングニュース」日本語版の副編集長、時事通信社マレーシア支局の経済記者などを経て、現在はニールセン・スポーツ・ジャパンにてスポーツ・スポンサーシップの調査や効果測定に携わる、ライターと会社員の「二刀流」。著書『大谷翔平の社会学』(扶桑社新書)

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