更新日:2024年04月24日 16:02
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「2027年の開業を断念」遅々として進まないリニア問題。静岡県知事だけではない「責任の所在」

なぜ「静岡工区」にこだわるのか

リニア

JR東海は “リニア”への理解を県民へ広めるべく静岡駅に説明板を掲出(撮影:小川裕夫)

なぜ、JR東海は静岡工区の工事にこだわるのでしょうか? 静岡県を通らないルートでリニアを建設するなら、静岡県から認可を得る必要はありません。 しかし、ルート変更となると、環境アセスメントをはじめとした事前調査からやり直さなければなりません。それでも「急がば回れ」のことわざのように、静岡県を迂回した方が早かったかもしれません。それでも、環境アセスメントをやり直した場合には、別の問題が出てくる可能性もあります。 また、迂回ルートで建設してしまったら、JR東海が目指していた東京―大阪を1時間で結ぶという想定も崩れてしまいます。これはJR東海にとって、絶対に避けたい話です。 また、すでに山梨県に実験線が建設済という事情もあります。リニアは1996年に先行的に整備された約18.4キロメートルの区間で実験を開始し、2013年には残りの区間も整備が完了しています。 これで先行区間と合わせて約42.8キロメートルの実験線が誕生し、この約42.8キロメートルの実験線をそのまま旅客転用することで工期・工費を圧縮できると考えていたのです。

多くの工区で工事の遅れが発生している

JR東海は2014年に起工式を挙行。この時点から開業年を2027年に定めて、整備を続けてきました。 川勝知事が着工の許可を出さない静岡工区は、約8.9キロメートルの短い工区です。そんな短い静岡工区がリニアの開業を阻んでいる――かのように見えますが、実際は多くの工区で工事の遅れが発生しています。 例えば、東京・品川区には北品川工区と呼ばれるリニアの建設現場があります。北品川工区では2023年10月にシールドマシンの損傷が見つかり、掘削を一時中断しました。また、愛知県でも坂下西工区と名城工区の工事が長らくストップしていました。 北品川工区・坂下西工区・名城工区の3工区は、川勝知事が辞任を表明した翌日から工事を再開しています。長らく工事を休止していた3工区が、川勝知事の辞任表明とともに工事を再開させたことは偶然とは考えづらいところです。 また、JR東海はHPでリニア工事の進捗状況を公開しています。HPを見ると、山梨県に開設が予定されているリニア駅は、いまだ事業者との契約すら締結できていません。 JR東海は2027年の開業延期を発表した数日後に山梨県駅の完成が2031年以降になると発表しました。JR東海によると、山梨県駅は着工から完成までに約6年8か月もの工期が必要なるとのことなので、それらを踏まえると未着工の静岡工区とは関係なく、すでに2027年開業が無理だったことが浮かび上がってきます。
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工事を中止する可能性はゼロとは言い切れない
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フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある Twitter:@ogawahiro

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