完成確率は20%? 陥没事故発生で遠のく外環道完成
外環道東京区間の建設が危機に瀕している。あくまで個人的な見解だが、外環道が完成する確率は、20%程度ではないだろうか。
昨年10月、調布市東つつじが丘2丁目で、陥没事故が発生した。外環道東京区間の大深度シールドトンネル(南行き)直上だった。
調査の結果、別の3か所でも空洞が発見された。これらはすでに埋め戻されているが、詳細な調査の結果、陥没個所の前後360m(幅16m)の区間で、地盤のゆるみが確認された。事業者のNEXCO東日本は、「原因はシールドトンネル掘削時の土砂の取り込みすぎ」と認め、住民に対し、原状回復を約束。当面工事を中断することになった。期間は2年間の予定だ。
原状回復とは、地下47mまでゆるんだ地盤を元に戻すことを意味するが、厳密にこれを実行するためには、地上から地下47mまで掘り進めて、土壌を入れ替える必要がある。そこまでしない場合でも、家屋を取り壊しての工事が必要だ。
しかし、大深度地下法によって、ある意味「勝手に」自宅の地下深くにトンネルを掘られていた住民側とすれば、そんな苦痛に耐える義務はない。つまり、被害を受けた住民全員が、よほど物分かりがよくない限り、南行きトンネルの工事は再開できない可能性がある。
この私見に対し、周囲から様々な疑問が寄せられた。
Q なんとか現場を迂回してトンネルを掘れませんか?
A 技術的には可能だが、ルート変更の手続きは猛烈に時間がかかるし、ルートを変えればいいという問題でもなく、現実的ではない。そもそも迂回するにしても原状回復が先なので、状況に変わりはない。
Q せめて関越道と中央道だけでもつなげませんか?
A 関越道側から発進したシールドマシンは中央JCTの手前までしか掘り進まない予定なので、東名側から発進したシールドマシンが再発進しないと、トンネルを中央JCTまでつなげるのは難しい。
Q こんな重要な公共事業が途中で中止なんて、そんな民間ディベロッパーみたいなことが起きるんですか?
A 高速増殖炉「もんじゅ」も、一度も実用運転されないまま廃炉が決まったが、外環道東京区間もそうなる可能性がある。
Q 途中まで掘ったトンネルは、今後どうなるんですか?
A 公共事業は簡単には中止にできないが、最悪、5年、10年とこのままの状態で塩漬けにされるのではないか。
「もんじゅ」は95年に火災事故を起こし、10年以上かけて運転再開工事を進めたが、2010年に再び事故を起こし、16年、ついに廃炉が決定した。最初の事故から21年後だった。外環道も同じような経緯をたどる可能性があるということだ。
現状は、NEXCO東日本が地下のトンネル側からの地質調査を行い、その結果を見て、必要ならば住民に対して「仮移転のお願い」をすることになるが、仮に自分がその立場なら、すんなりとは応じられないだろう。
南行きトンネルの工事を再開できない可能性
中止になったら掘ったトンネルはどうなる?
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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