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鳥貴族“全品370円均一”に値上げでも「原価率30%を守る」攻めの接客マニュアルとは

コロナ以降も業績好調だが変化も

 鳥貴族の2023年7月期連結業績は、売上334億4900万円、営業利益14億1700万円であり、収益性に関しては営業利益率4.2%となっている。粗利益も234億4300万円あり、約70%確保している。それでも値上げが必要とは将来の外食環境に不安を持っているのだろうか。  また自己資本比率は35.7%、ROE(株主が出資した資金に対して企業がどれだけの利益を上げているかを示す指標)は9.3%(23年7月期決算)と、資本効率は「業界平均(経済産業省:2022年企業活動基本調査・飲食サービス業5.1%)」を上回っている。  コロナの影響で居酒屋業態が大打撃を受け、厳しい経営状態に追い込まれた2021年8月には、ハンバーガー業態(チキンバーガー)の新店舗「TORIKI BURGER」をオープン。また2023年1月にはサントリー傘下でやきとり大吉を運営しているダイキチシステム株式会社の全株式を取得し、子会社化した。  そもそも外食産業にはリスク分散のために多業態展開を進める企業が多い。しかし、鳥貴族は「鳥貴族のDNA」(チキン、均一価格、国産)のもと、流行や景気に左右されない永遠の業態を目指そうと、単一業態での展開を進めていく方針を表明していた

値上げしても支持される鳥貴族の魅力は

鳥貴族

鳥貴族の焼き鳥

 そんななかで複数業態への方針転換を行ったことに伴い、株式会社鳥貴族、株式会社TORIKI BURGER、ダイキチシステム株式会社を傘下に置く鳥貴族ホールディングス(現:エターナルホスピタリティグループ)に商号変更し、持株会社化するなど機動的な体制に再構築している。  2021年からグローバルチキンフードカンパニーを長期ビジョンとして活動してきたが、今回の社名変更を第二の創業と位置付け、国境を越えて世界に展開する「グローバル焼鳥ファミリー(Global YAKITORI Family)」を目指している。  店の最大の魅力はメニュー全品を同一価格で提供する低価格路線で、これが人気となり集客力を高めている。この均一低価格は創業から変わっていない。ただし、価格は280円(税別)からスタートしたが、段階的に値上げを余儀なくされており、2024年5月からは370円となっている。  料理に関しては、味や品質を考慮し、創業当初から産地直送の国産鶏肉を使用しており、焼き鳥の串打ちは各店舗で行っている。筆者の事務所の下にも鳥貴族があり、パートさんがもくもくと串打ちなど店の準備をされているのをよく見る。一方で、タレなどは味の均質化のために本社工場でまとめて生産してするなど、本社工場と店舗で調理作業の効率的・効果的な分業体制を構築している。
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あれだけ安くても原価率が30%を守れるワケ
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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