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鳥貴族“全品370円均一”に値上げでも「原価率30%を守る」攻めの接客マニュアルとは

あれだけ安くても原価率が30%を守れるワケ

 鳥貴族のチェーン全体で原価は100億600万円で、原価率は29.9%と3割を切っている。あれだけ安く販売しているのに原価管理はきっちりされているのは流石である。  均一価格はお客さんにとっては明朗会計で注文しやすく、鳥貴族のように単価が低価格なら、あまり財布の中身を気にすることなく、容易に追加注文を促しやすいメリットがある。しかし、牛肉や豚肉よりも仕入れ値が低いとはいえ、370円の均一価格(5月1日~)では粗利ミックスを適正に管理しなければならない。  鶏肉がメインの店だから鶏肉料理の原価率は高めに設定してあるだろうが、その鶏肉料理の粗利益率が低くても、注文を増やし、高回転させれば、粗利益額は大きくなるので、経費の支払い原資に余裕が出て、店にとってもお客さんに嬉しい。

居酒屋で注文してくれると嬉しいメニュー

鳥貴族

原価率が比較的低いとされる野菜などのメニュー

 一般論として飲食店側にとっては、それぞれ原価が異なるメニュー構成の中、焼鳥や唐揚げなど高めの原価商品とキャベツ(お代わり自由)、枝豆、サラダなど低めの原価商品をうまくバランスよく、お客さんに注文してもらうことが利益確保のカギとなる。  そのための仕掛けが必要で、店への利益貢献度が高い商品への誘導が求められる。適度に野菜を組み入れるなど、食事のバランスをとった注文を促し、顧客満足度を高めながら、店と顧客の双方が良好な関係維持を目指すべきである。70%の原価商品と20%の原価商品の販売バランスの適正化に向け、店は知恵を絞っている。  鳥貴族は他の居酒屋のようにお客さんが注文をしないのに勝手に有料の突き出しを出すことはしない。その代わり、「料理が出るまでスピードメニューはいかがですか」と必ず、店員さんが推奨販売して注文を促し、客単価を上げる努力をしている。客席への気配りを徹底した攻めの接客マニュアルにもなっており、店側の姿勢で客単価が上がるといった典型的な店でもあるようだ。
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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