お金

老舗お酢メーカーの後継者は元広告マン。“創業者の末裔”と思われても「変化球勝負」で挑むワケ

経営者である父の背中から学んだこと

タマノイ酢株式会社

1996年に発売された「はちみつ黒酢ダイエット」

 そんなタマノイ酢は、変化球で勝負を仕掛ける「挑戦の歴史」を歩んできたそうだ。世界で初めてすし酢を粉末化させた調味料の「すしのこ」や、ビネガードリンクのパイオニアになった「はちみつ黒酢ダイエット」など、時代の変遷に合わせて伝統と革新を紡いできた。 「やはり業界をリードするメーカーは王道の戦略を取ってくる傾向があります。広告代理店時代もそうでしたが、正面からではなく違う角度からアプローチしてみたり、奇をてらった策を打ってみたりしないと勝つことは難しいと考えています。そういうのは、経営者である父親の背中を見て学んだ部分もあるかもしれません」  日本の伝統的な基礎調味料の消費量が年々減っているなか、タマノイ酢ではロングセラー商品であるすしのこのレシピ開発や、人気TVアニメ「【推しの子】」との特別コラボ商品の発売などのマーケティングで、新たな需要喚起を図っている。

縮小する基礎調味料の市場において

タマノイ酢株式会社

SNS上で「すしのこが【推しの子】にしか見えない」という声から、TVアニメ『【推しの子】』と「すしのこ」の特別コラボ商品が実現した

「大手企業は、広告予算が大きい傾向があります。そのため、SNSを起点に消費者を巻き込みながら、話題を醸成していくことで、認知を取っていくつもりです。そして、実売につなげていけたらと考えています。直近の『推しの子』との特別コラボ商品は、Yahoo!リアルタイムでトレンド1位を獲得するなど、大きな反響をいただきました。今の時代、本当にやり方次第でいろんなチャンスが見出せると感じています」  とはいえ、広告に対して消費者が嫌悪感を抱きやすくなっているのも事実。消費者からの支持を狙って、広告で無理やり共感ストーリーを作り出そうとすれば“違和感”につながってしまう。そうならないためには、「企業と消費者との絶妙な距離感」が肝だと言える。 「常にアンテナを張りながら、いかに自然なストーリーに落とし込めるか。その点については、今まさに試行錯誤している段階なので、これからもさまざまな角度からのアプローチで、日々のライフスタイルの中でお酢の商品を使ってもらうように働きかけ、それがひいては健康寿命の延伸に貢献できたらと考えています」 「将来は会社を継ぎたい」。そう思うようになったのは、播野さんが中学生のときだった。学生の頃に思い描いていた未来が現実となった今、播野さんは老舗企業の「強み」を生かしつつ、時流に沿った「新しさ」も取り入れていけるように尽力していくという。 <取材・文・撮影/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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