更新日:2024年09月05日 12:05
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「私人逮捕系YouTuber」裁判で暴かれた“過激演出”の実態。“収益の総額”も明らかに

逮捕の瞬間

裁判所

東京地方裁判所/筆者撮影

 被告人らの作戦に引っかかってしまったB氏は、同日の午後9時頃に待ち合わせに指定された新宿区内の路上に車に乗って現れた。今野被告人は、B氏が現れたことを遠目から確認して110番通報。  カメラマンの奥村被告人が動画を撮影しながら、今野被告人は車内にいたB氏に向かって「ユウです。ユウです」と言って近づいていった。  その後、被告人らは、通報を受けて臨場した警察官らに対して、B氏を指さして「とりあえず、所持品検査をしてください」と職務質問するように執拗に迫った。当然、何も分からずに出動させられた警察官らは混乱した状況を把握するために、説明を被告人らに求めたものの、被告人らは「こっちを先にやってください」などと語気を強めていた。  検察側は動画を証拠として提出し、法廷内のモニターを使って映し出された。約14分間の動画で、傍聴人には見えない位置にモニターが配置され、音声はイヤホンからという徹底ぶり。被告人らは食い入るようにモニターを見つめていた。

私人逮捕系ユーチューバーの問題点

 2023年下半期から「私人逮捕系ユーチューバー」が相次いで逮捕され、世間を賑わせたわけだが、もちろん「私人逮捕」自体は要件さえそろえば違法ではない。  逮捕には、大きく分けて「通常逮捕」「緊急逮捕」「現行犯逮捕」の3つの類型があり、特に「現行犯逮捕」というのは誰でも令状なしで逮捕できる。これが俗に言う「私人逮捕」というものだ。 「現行犯」とは、現に罪を行っていたか、罪を行い終わった者を指す。例えば、自分の目の前で犯罪が起きたのに周囲に警察官がいないとき、その場にいる人が逮捕・確保するほかない。そんな“緊急でやむを得ない場合”に認められるのが「私人逮捕」である。  一方で、「私人逮捕系」とされる動画投稿者らは、再生回数を多く稼いで高い収入を得る目的で、撮影しながら逮捕できるチャンスをあらゆる手を使って演出する。しまいには、相手を追い詰めて金銭を要求したとされる事件まで発生してしまっているのだ。  このように、「私人逮捕系」とされる人々が作り出すコンテンツは、“制度の趣旨に反する行為”と言えるだろう。  今回の裁判に出頭した今野被告人は、終始検察側を鋭い眼光で見つめており、闘志がうかがえた。昨年12月の起訴から、約9か月かかっての初公判。まだまだ裁判は長引きそうだ。 文/学生傍聴人
2002年生まれ、都内某私立大に在籍中の現役学生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴にハマり、傍聴歴6年、傍聴総数900件以上。有名事件から万引き事件、民事裁判など幅広く傍聴する雑食系マニア。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行っている。
X(旧ツイッター):@Gakuse_Bocho
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