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袴田事件「無罪判決の瞬間」は異例すぎる光景に。傍聴人が法廷で目撃した「涙を流す“まさかの人物”」の正体

裁判長からは謝罪の言葉も

裁判所

無罪判決を喜ぶ、小川秀世弁護士(左)と袴田ひで子さん(右)
撮影/松本雄世

 判決の言い渡しは順調に進み、午後3時52分には判決文の読み上げが終了した。そして、國井裁判長はひで子さんに対して、証言台の前へ来るように促した。証言台の椅子に座ったひで子さんに、國井裁判長は「無罪判決について簡単に申し上げますが……」と説明を進めようとしたが、ひで子さんはご高齢で耳が遠い様子。  その時、急にひで子さんが椅子から立ち上がった。そして、裁判官席と証言台の間にある、書記官席の前に直立したのだ。耳が遠いからと、なんともひで子さんらしいお茶目さ。その瞬間、弁護団からも傍聴席からも笑いが起きた。  國井裁判長は、書記官に対して、ひで子さんのところまで椅子を持ってくるように指示。結局、書記官席の前に椅子を置き、裁判長からの説明を聞くこととなった。そして、國井裁判長は最後にひで子さんに対して、言葉を詰まらせながらこう言った。 「第一回公判で、ひで子さんから『巖に真の自由をお与えください』と言われましたが、真の自由を与えることは、裁判所にはその役割は与えられていません。ただ、自由の扉はちゃんと開けました。真の自由というのは、確定しないといけません。判決までものすごく時間がかかり、本当に申し訳ないと思っています。もうしばらくお待ちいただきたいと思います。これからも心身共にお健やかにお過ごしください。健康でいられることを心からお祈りします」  そして午後3時59分、世紀の裁判は幕を閉じた。

再審の課題は残り続ける

 検察側は無罪判決を不服として控訴することができるが、「公益の代表者」として本件を控訴することは断じてあってはならないこと。  そして今回の事件で、再審無罪まで58年がかかったことなど、法の不備も浮き彫りとなった。  控訴期限は10月10日午後11時59分。仮に検察側が控訴しなかったとしても、再審の課題は残り続ける。 取材・文/学生傍聴人
2002年生まれ、都内某私立大に在籍中の現役学生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴にハマり、傍聴歴6年、傍聴総数900件以上。有名事件から万引き事件、民事裁判など幅広く傍聴する雑食系マニア。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行っている。
X(旧ツイッター):@Gakuse_Bocho
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