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横断歩道で「車が通るたびに渡ろうとする70歳の父」…警察沙汰に発展も「自分は間違っていない」と逆ギレ

イヤホンを付けずにラジオを流していた

 それ以降、父親は横断歩道での迷惑行為をやめた。とはいえ、それは別の行為に目を移しただけだった。 「横断歩道での一件からしばらくして、今度はバスの中でイヤホンを付けずにラジオを流していたようなんです。それまでラジオなんて聞いている姿は一度も見たことがありません。なのに、突然ポータブルラジオを買って、バスの中で聞き出したんですよ。それを運転手の方に注意され、またもやトラブルになりました。今度もまた家族が出向いて平謝り。本人は反省の色をまったく見せず、自分が人に迷惑をしている様子すら見せないんです」  何も知らず自然に迷惑行為をしていたとは考えられないだろうか? 「それはないと思います。バスには何百回となく乗っていて、それまで一度もそんなことをしたことがありませんし。明らかに人に迷惑をかけることを目的としているんです。その頃から、家族みんな父親を厄介な存在と感じていました」  かつては家族に慕われていた父親の居場所は、もはや家の中にはなくなってしまった。家族は話し合い、父親を老人ホームに入れることを計画するも、断固として拒否。誰にも迷惑をかけないことを約束させ、それまで通りに暮らすこととなった。

隣人宅の庭に侵入し、草木の手入れをし始めた

 しかし迷惑行為癖は治らず、それ以降も続いた。自宅近所に若い夫婦が引っ越してきたとき、その家の庭に勝手に入り、草木の手入れをし始めたという。自前の園芸用の鋏を用意し、白昼堂々と手入れをした。落とした葉をビニール袋に集めて庭の隅にまとめ、あちこちに除草剤を撒いた。 「それに気づいた奥さんが私に電話をしてきたんです。怒っている様子ではなかったのですが、おそらく感情を隠していただけですよね。それがきっかけで近所付き合いがパタっとなくなりました。私に気づいても、挨拶すらされなくなりましたよ」  父親の迷惑行為に我慢できなくなった清美さんは、泣きながら父親を叱ったという。他人の庭に入るのは犯罪だ、いつか警察に捕まると。しかし、その決死の訴えも父親には届かなかったようだ。 「せっかく俺が綺麗にしてやったのに」と、ぼそっと言ったという。  「実の父親に対して愛想を尽かすとは思いませんでした。それまでは立派で尊敬できる人でも、今はもう他人のような目で父を見てしまいます」  ニュースやSNSで見かけるトンデモ老人。それは自分とは関係ない世界の話ではない。被害を受ける側になるかもしれないし、被害を与える側になるかもしれない。高齢化が進んだ先に訪れる未来は…。 <TEXT/山田ぱんつ>
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