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牛乳パックのリサイクルに“異様にこだわる”夫。臭いを気にして水洗いをした妻に「感謝どころかモラハラを行う」心理

リサイクルのためではなく、「臭いから」とすすいだことに対する不満

 では、一体なぜ、Aさんはこのような反応をしてしまったのでしょうか?  Aさんは、パートナーが自分のゆすいだ牛乳パックをゆすいでいるところを見て、どう感じていたのでしょうか。 「最初、パートナーに『自分の思いがやっと通じたんだ!』と嬉しくなりました。でも、実際にはそうじゃなかったんです。だから、余計にがっかりして腹が立ったんだと思います……。GADHAで学び、自分としては、パートナーに加害しないようにしよう、パートナーを少しでもケアしようと日頃から気をつけていただけに、『自分としてはこんなに頑張っているのに、まだダメなのか……』と、すごくショックでした」  僕は、Aさんに聞いてみました。 「Aさんとしては、実際の自分の状況と、自分の思い描く理想の状況とのギャップが大き過ぎて、到底それを認めたり受け入れたりできる心境ではなかった、もっと言えば『認めたら負けだ!』くらいに感じていたということでしょうか?」  Aさんは、「そう……そうです!そうなんです!!自分ができていないことを認めてしまったら、何だか今までの自分の頑張りや努力が、何なら存在や人生そのものまでが全て無意味になってしまうような気がして……」と力なくつぶやきました。  このケースに関して、Aさんは、今後どのようにすることができるのか、考えてみたいと思います。  まず、物理的なレベルでは、Aさんがこれまで以上に牛乳パックをしっかりゆすいだり、パートナーが普段利用しない別の場所にゆすいだ紙パックを置いておく等、そもそもパートナーが気になる臭いを発生させていなければ、パートナーとの口論は避けられると思われます。  その際のポイントとしては、解決策を「(相手ではなく)自分の行動の中に見出すこと」です。なぜなら、今回のケースのように「他者の行動を支配(コントロール)しようとする(=自分が相手に解釈を強要する)こと」はモラハラの最たるものであり、そのようなケアの方法は持続不可能だからです。 【参考】⇒「ついキレてしまう」の嘘。「怒りをぶつけても良い相手だからキレている」が正しい  また、コミュニケーションのレベルでは、①相手のニーズや感じている感情を受け止めたり、寄り添ったりするとともに、②自分の非を率直に認めること、そして、③自分の期待とは異なるパートナーからの反応(相手からのNo)から、素直に学び直そうとすることが考えられます。 【参考】⇒「相手が嫌がる言い方」をやめようとしない人々の傲慢な精神世界とは」、「相手に多くを与えたのに、離れていってしまう」という人の特徴とは  例えば、今回のケースであれば、パートナーの表明してくれたニーズ「紙パックが臭わないようにしてほしい」に対して、 「臭くしてしまってごめんね。すぐに片づけるよ」 「次からはすすぐ回数を増やして、臭くならないように気をつけるね」  といった趣旨のことをAさんがパートナーへ伝えられていたなら、おそらく違う結果になっていたと思われます。

ケアは相手のニーズを理解してようやく成り立つ

 最後に、僕はAさんの話の中で感じた違和感を、思い切って伝えてみることにしました。 「先ほど、Aさんは『パートナーに加害しないようにしよう、パートナーを少しでもケアしようと日頃から気をつけている』と言っておられましたが、この紙パックリサイクルに関して、Aさんのパートナーのニーズは何だとお考えですか?」 「え?……えーと何だろう?……『紙パックを臭わないようにしてほしい』……でしょうか?」  そして、重ねて質問してみました。 「そうですね。それもあると思います。他にはどうでしょうか?今のAさんのパートナーのもっと大きなニーズというか、根本的なニーズは何でしょうか?」 「え……、うーん……。……何だろう?」  Aさんは言葉に詰まってしまいましたが、僕は続けました。 「Aさん。相手のニーズがわからない状態では、いくら『ケアしよう(=相手のニーズを満たそう)』と意識していても、具体的に相手をケアすることはできませんよね。  今回のケースで言えば、紙パックリサイクルに関してAさんのパートナーが感じ考えていること『子どもが小さくて色々手のかかる時期なんだから、今は可燃ごみで出したい』に対して、尊重した言動をAさんができるのかということです。  残念ながら、Aさんの話をお聞きする限り、Aさんは、パートナーのニーズよりも、概ね一貫して『リサイクルしたい!』というご自身のニーズの方を優先した言動をしているように感じました。だからこそ、『パートナーに思いが通じたと思ったけど、そうじゃなくてガックリきた』という話なのではないでしょうか?」 「あ……。確かに、そう……ですね……」  Aさんは、小さな声で、うつむき加減に答えてくれました。
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相手がしてくれたことに対し、シンプルに感謝を示すことが大事
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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