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「スタバでMacドヤァ問題」が示すスタバの強さ。「見せびらかしたい」という欲望を叶える場所は、いかにして作られたのか

 日本を、いや、世界を代表するカフェチェーンである「スターバックス」。2023年の段階で、世界中に3万8038店舗を有するこの一大コーヒーチェーンは、日本でもかなりの数の店舗を展開していて、2024年3月時点で1917店舗ものスタバが日本を覆っている。この数は、国内のカフェチェーンとしては最も多く、飲食系のチェーンストア全体で見たときも、マクドナルド・すき家に続く数。  特に日本は、スタバがアメリカ以外ではじめて進出した地域でもあり、2026年には日本上陸30周年を迎える。しかも、アメリカのスターバックスの業績が不安定なのに対し、日本でスターバックスを運営するスターバックス コーヒー ジャパンの業績は基本的に拡大し続けている。スタバにとって日本とは非常に重要かつ、勢いのある地域なのだ。  どうしてスタバはここまで勢力を拡大し続けられるのだろうか。その理由の一つに、「ニセコ化」があると私は考えている。  ※本記事は、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)より抜粋・編集したものです。
スタバ

Natee Meepian – stock.adobe.com

スターバックスはテーマパークのような存在?

 まずは、興味深い記事を紹介しよう。 「TDL(筆者注:東京ディズニーランド)とスターバックスに見る『顧客に惚れさせる』演出」 最近は繁華街にコーヒーショップが増えている。中でもスターバックスコーヒーの人気は高く、昼過ぎや一息つきたい午後三時ごろには行列が出来ることも珍しくない。他のコーヒーショップに比べ単価は高いにもかかわらず、「スターバックスでなければダメだ」というファンは多い。スターバックスもTDL同様、独特の世界を形成している点に特徴がある。(『戦略経営者』2000年9月号)  ディズニーランドとスターバックスが比較され、それらが「独特の世界を形成している点」で似ていると述べられる。スターバックスを「テーマパーク」のように捉えているのだ。実際、スターバックスは「スターバックス リザーブ ロースタリー東京」という「コーヒーのテーマパーク」とも呼ばれる施設を運営していて、両者が近しい関係にあることを物語っている。

スタバが「フラペチーノで選択した客層」とは

 スタバの経営を見ていくと「ニセコ化」の重要な要素である「選択と集中」が色濃く見られる。その結果、テーマパークのような店内が生まれたのだ。  では、スタバはどのように「選択と集中」を行っているのか。それが、①商品ラインナップと②商品価格、の2点だ。  まずは、①について。この顕著な例が「フラペチーノ」の導入である。スムージーのようなもので、現在では、スタバを代表するメニューの一つである。月替わりのフラペチーノは日本でも大人気で、新しい味が出るたびにSNSを騒がせる。毎月新作フラペチーノは必ず飲みにいく、という人も多いのではないだろうか。  このフラペチーノは、何を変えたのか。それは、「客層」であった。それは、コーヒーを飲まない客層、特に若い女性を多く店に引きつけることとなった。こう書くと、「顧客を広げた」という言い方の方が正しそうだが、それは同時にスタバに来る客層を「選んだ」ともいえる。  もともと、スタバのCEOであったハワード・シュルツはこのフラペチーノの導入に反対していた。彼は、根っからのコーヒー好きで、イタリアで飲んだコーヒーの味や店の雰囲気をアメリカでも再現したい、という強い思いのもとで作られたのが、スタバだった。しかしイタリアには、こんなスイーツのような飲み物なんてない。シュルツはそう考え、反対したのだ。  しかし、テスト販売してみたところ、フラペチーノは大人気。この勢いに押されて、シュルツもフラペチーノの販売を認めざるを得なかった……という逸話がある。後年、シュルツはこう回想している。 「わたしが間違っていました。良い教訓になったと思います。やはり顧客は常に正しいのです」 (Alex Bitter、山口佳美編集・翻訳「フラペチーノに反対したのは『間違いだった』スターバックスの元CEOハワード・シュルツ氏が明かす」)
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安売りをしないスタバ。なぜ?
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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【谷頭和希 著『ニセコ化するニッポン』刊行記念イベント -ゲスト pha-】

■日程:2025年3月5日(水)
■時間:開場19:00、開演19:30、終演21:30
■場所:ROCK CAFE LOFT (東京都) 東京都東京都新宿区歌舞伎町1-28-5
■チケット代金:
会場+配信¥2000+ドリンク代
会場のみ¥1500+ドリンク代
配信のみ¥1500
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