“過去最高益”びっくりドンキー。人気の理由は、「安いから」ではなく「おいしいから」…“ハンバーグ特化”戦略の巧妙さ
ハンバーグレストランとして知られる「びっくりドンキー」(以下、びくドン)は、飲食業界の中でも好調で、2024年3月には過去最高益を記録した。顧客のブランド認知に対する調査であるNPS調査によると、ファミリーレストラン部門の首位が、このびくドン。ブランディングに成功しているのだ。「びくドンだから行く」というのが、定着しているというわけだ。この点でも、スタバに近しい特徴を持っているといえる。
※本記事は、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)より抜粋・編集したものです。
びくドンといえば、ぱっと思いつくのが、あの奇抜な外観・内装。
「テーマパーク」ということでいえば、まさにぴったりかもしれない。国道沿いを車で走っていて、あの外観が目に入ったときのちょっとしたワクワク感は、どこかディズニーランドが目に入るようなワクワク感と似ている。経済ジャーナリストの高井尚之は、びくドンを「テーマパーク型飲食店」の走りだと評価する。
しかし、びくドンの人気を支えているのは、これだけではない。というより、びくドンは、もっと本質的な部分でテーマパーク的で、そして「ニセコ」的だと思われるのだ。そして実際に、その戦略を見ていると、きわめて巧妙に「選択と集中」が行われていることがわかる。
びくドンが行う「選択と集中」とはなにか。
それは「ハンバーグ」という一品目に特化している、ということだ。しかも、それはただの「ハンバーグ」ではない。「日本人向けハンバーグ」に特化している。
びくドンで不動の人気を誇るのが、「ハンバーグディッシュ」。ハンバーグとご飯、そしてサラダが一つのプレートに載っている。あの丸い木の皿に愛着を覚える人も多いかもしれない。びっくりドンキーの前身は、1968年、庄司昭夫が岩手県・盛岡で開業した「ハンバーガーとサラダの店 べる」。元々ハンバーガーを提供していた。しかし、その数年後、日本にやってきた「マクドナルド」を見た庄司は「これには勝てない」と思い、ハンバーガーをバラバラにして提供する形で考案したのが、このメニューだった。
大塚一馬は「ドンキーは本質的に単品のファーストフード(FFS)なのである」と書いている(『月刊食堂』2001年9月号)。確かに、現在でも、びっくりドンキーのメニューのほとんどはハンバーグディッシュで、基本的にこの店に来るほとんどの人がハンバーグディッシュを食べるだろう。これは、他のほとんどのファミリーレストランが、多品種であることを踏まえると、大きな違いだといえる。
ニセコや新大久保では、さまざまなタイプの観光客を受け入れることはしない(少なくとも、現状、受け入れるような空間の作り方をしていない)。びくドンもまた、「ハンバーグ」に注力して、すべてのメニューをまんべんなく出す、ということをしないのだ。
さらに、このハンバーグはただのハンバーグではない。徹底したこだわりがそこに詰められている。「ハンバーグ」は外国からやってきたものだが、それはすでに日本人の舌にも馴染み深いものとなっていて、そのハンバーグの強みを発見し、そこに特化したのが、びっくりドンキーの成功の要因である。

picture cells – stock.adobe.com
びっくりドンキーは「テーマパーク型飲食店」
「ハンバーグ」という一品を「選択」した
ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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【谷頭和希 著『ニセコ化するニッポン』刊行記念イベント -ゲスト pha-】
■日程:2025年3月5日(水)
■時間:開場19:00、開演19:30、終演21:30
■場所:ROCK CAFE LOFT (東京都) 東京都東京都新宿区歌舞伎町1-28-5
■チケット代金:
会場+配信¥2000+ドリンク代
会場のみ¥1500+ドリンク代
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