ニュース

なぜ『ドラゴンボール』のテーマパークが「サウジアラビア」に作られるのか。日本のエンタメ業界が抱える“決定的な弱点”

サウジアラビアに「ドラゴンボール」のテーマパークが出来る。2030年ごろまでに完成が見込まれていて、敷地面積は500,000㎡を超える。東京ディズニーランドと同じぐらいの広さだ。ドラゴンボールの各場面が再現された7つのゾーンには30を超えるアトラクションが建設される予定で、そのアトラクションのうち5つは「世界初の体験」になるという。また、中央に建設される神龍のジェットコースターは高さ70メートルを誇り、その本気度の高さがうかがえる。
『ドラゴンボール』テーマパーク

プレスリリースより

「カリンの塔」に展望台が設置される予定

すでに発表されているイメージ図では園内の様子を見ることができるが、中華風をベースにしながらも、世界のどこともつかない作品の風景が広がっている。作中に登場する建造物も作られるらしく、イメージ図には園内全体を見渡せる「カリンの塔」が映っている。これは、原作者・鳥山明がもっとも好んだ建物で、天と地をつなぐ高い塔の上にある楕円形の建物に猫の仙人・カリンが住んでいる。テーマパークではこの位置に展望台が設置される予定だそうだ。

どうしてサウジアラビアなのか?

しかし、日本人として気になるのは「どうしてサウジアラビアなのか?」ということ。日本にできてほしかった、というのも、もっともな声だろう。これについては、すでにいくつかの報道があるが、それらをまとめると、 ①サウジアラビアでのアニメーション・マンガ熱の高まり ②サウジアラビアの国家プロジェクトとの連動 上記の二つになる。まず一つ目だが、サウジアラビアでは近年、日本のアニメーション・マンガへの注目が高まっている。マンガプロダクションズのCEOを務めるブカーリ・イサム氏は、サウジアラビアの若者の3人に1人が日本のアニメーションを見ていることをあげる(2022年の数値)。また、首都リヤドにあるブルバード・リヤド・シティには、コスプレイヤーが無料で入場できる日があり、そこでのコスプレの8割は日本のアニメーションのコスプレなのだという(現代ビジネス「なんとコスプレも盛んに…じつはいまサウジアラビアで「日本のマンガ・アニメ」が大人気になっていた…!」)。
次のページ
サウジアラビアには「すべてが揃っている」
1
2
3
ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
記事一覧へ
おすすめ記事
【関連キーワードから記事を探す】