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ラブホテルの待合室で盛り上がった「泥酔大学生カップル」が暴走。スタッフ4人がかりで引きはがし、あえなく“永久出禁止処分”に

ディープキスをはじめ、お互いの服を…

彼らはソファーに座るなりセクシービデオ顔負けのディープキスをはじめ、お互いの服をまさぐりだす。慌てた潮見さんが「私たち見てますよ!!」と酒ヤケした掠れ声で絶叫しても止まらない。むしろ逆にスイッチが入ったかのように、男の手が服の上から服の中に移動し、女性のヘソまで露わになってしまっていた。このままではソファーで上下運動がはじまってしまうーーそう思った僕は休憩室を出て彼らを腕づくで止めに入ろうとしたが、そこでタイミング悪く「304号室、清掃を開始してください」という自動音声アナウンスが流れた。 「あとは任せました!」 そう告げて部屋に向かったわけだが、しばらくは清掃が終わらず、なかなか休憩室に戻れなかった。とはいえ、こうして僕らが清掃をすれば空室ができるのは自明の理。あのカップルを部屋に案内さえしてしまえば何の問題もないのだ。こんな甘い考えを浮かべながら、一時間後に清掃を終えると、フロントは大変な騒ぎに見舞われていた。そう、泥酔カップルは部屋まで待てずにへこへことピストンしはじめていたのだ。それを見守る野次馬たちでエントランスがごったがえしていて、その異様な光景を前に唖然としている僕に対して、潮見さんは涙目で説明をはじめた。 「私だってちゃんと止めたのよ……」

止めに入るも、レジから離れられず…

潮見さんは、僕がいなくなってすぐにカップルを止めに入ったらしい。だが、部屋から出てくる客の対応とオトナのお店からの電話が重なりてんやわんやしていると、あれよあれよという間に彼らの周りに人だかりができ、燃え上がった彼らは……というのが事の顛末で、人がたくさんたむろしている状態ではレジから離れることができず、全て諦めたうえ僕らが戻ってくるのを待っていたとのことだった。 僕にも、もう一人の清掃スタッフにも人だかりを押しのけてカップルを引き剝がす余力はなく、早く行為が終わるのを祈ることしかできなかった。だが、建物の外にまで響き渡る喘ぎ声に野次馬はどんどん増えていき、騒ぎが収まる様子はなかった。このまま誰かがカメラを回したあげく、仮に映像が流出してしまったりすれば会社にとっても大問題だ。 仕方なく系列のホテルから増員を頼んで4人がかりでカップルを引きはがし、客室まで担いでいった。のちに、そのカップルの写真はフロントの一番目立つところに貼られ、“永久出入り禁止リスト”に赤字で追加されていた。写真を貼られ、赤字でリストに追加されたのは8年ぶり、20年経営を続けてきたラブホテルで4組目だった。この騒動のせいでクビを言い渡された潮見さんは、後日刃物を持って社長を襲撃したのだが、この話はまたの機会にしたいと思う。
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ラブホを使う際、お酒はほどほどに
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小説家を夢見た結果、ライターになってしまった零細個人事業主。小説よりルポやエッセイが得意。年に数回誰かが壊滅的な不幸に見舞われる瞬間に遭遇し、自身も実家が全焼したり会社が倒産したりと災難多数。不幸を不幸のまま終わらせないために文章を書いています。X:@Nulls48807788
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