更新日:2025年04月23日 16:25
エンタメ

青学落研に現れた“敬語を使わない帰国子女”。ナメられる部員たちをよそに、ヒーローになった男がいた

YouTubeチャンネル登録者数180万人を突破した「バキ童チャンネル」。 唯一無二の企画とキャラクターを活かした動画が支持される一方で、中心メンバーのお笑いコンビ、春とヒコーキが出会った青山学院大学・落語研究会についてのエピソード動画も強い人気を集めている。 そんな「青学落研の話」を、チャンネル出演者であり、青学落研出身者であり、春とヒコーキの学生時代からの友人でもある芸人・町田が振り返る。第6回は、町田の1つ先輩でぐんぴぃの同級生だった、絶斗(ぜっと)さんという部員についての話。
キリンにエサをあげる絶斗さん

キリンにエサをあげる絶斗さん

「面白くないと思われるくらいなら何もしない」キャラ

落研はあくまでも大学生のサークルなので必ずしも面白い人たちが集まっているわけではないが、面白いことをしたい人たちが集まっている場所だとは言えるかもしれない。 僕が入部する前の青学落研も、かつてはそのような面白いことをしたい人たちが集まり、笑いにストイックな先輩も多くいたらしい。 そこに革命を起こしたのが、僕の一学年上の先輩である絶斗さんだった。絶斗さんは面白いことを絶対に言おうとしなかった。何があっても。決して。 面白いことを言えない人だと思われるくらいなら「面白いことなんか頼まれたって言ってやるもんか」という尖ったキャラを確立していたのが絶斗さんだった。 じゃあ彼は普段何をしゃべっていたのか。思い出せない。僕たちはずっと絶斗さんと一緒にいた。今でも仲が良い。それなのに絶斗さんが口にした言葉を何も思い出すことができない。しかしここは落語研究会である。絶斗さんも落語では言葉をしゃべらなければならない。 先輩から聞いた話では、絶斗さんが入部して初めて部員たちの前で落語のネタ見せをしたとき、セリフは完全に覚えていたらしいのだが高座の上で「あ、あ、あ」しか声が出せなかったらしい。 困り果てた上級生が「こういう時は一度走ってくれば治るから」とアドバイスして、絶斗さんが「あ、あ、あ」と言いながら首を縦に振って廊下をひとっ走りしてから再び高座に座り、満を持してネタ見せを再開するとさっきより少し高い声色の「あ、あ、あ」が教室に鳴り響いたという。

“生意気なアメリカ育ちの男”が絶斗さんの後輩になった

そんな絶斗さんも二年生になり後輩たちが入ってきた。初めのうちは彼は「俺が一言でもしゃべると一年生は入らないだろうから絶対にしゃべらないぜ」とオラつきながら言っていた。 しかし、そこに一人の入部希望者が部室に見学に来た。アメリカ育ちらしく、日本の姓と名の間にミドルネームを持っていた。彼は初日からこう宣言した。 「俺って日本のルールで育ってねぇから敬語とか使えないけどいいよね?アメリカに敬語とかないから仕方ねぇっしょ?」 落研には他にも2名ほどアメリカ育ちの上級生がいて「アメリカにもあるけどね」と小声で言い合っていたが、関わりたくないので本人の前では言わなかった。どうせそういう部員はすぐに来なくなるだろうという経験則もあったのだろう。 しかし彼はそれから毎日のように部室に入り浸るようになった。上級生に対しても常に上から目線で、陰キャの墓場・青学落研の面々は彼に何も注意できずに「マジか。こいつほんとに入るのか」と意気消沈していた。 そんなある日、彼がこんな話をした。 「日本人ってなんでこんなに歯が汚ねぇの?アメリカではありえないよ。俺なんか一日に10回くらい歯ぁ磨くからね」 その瞬間だった。 「10回っていつだよ」 しぼり出すような声。 それは絶斗さんの声だった。
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絶斗さんと後輩が口論した結果
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ぐんぴぃの友人。芸人としての活動もしている。@saisaisai4126

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