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苦節8年なでしこライター「“宝くじ”を買いつづけていてよかった」

なでしこライター連日報道が続くなでしこJAPAN。本誌8/2号でも「清貧の極み!なでしこJAPAN快進撃の裏側」で彼女たちの厳しい環境をお伝えしたが、長年なでしこを追い続け、記事にし続けてきた取材記者の”苦労”はあまり知られていない。メディアに注目されるはるか前から、記事にし続けてきたライターの裏話をお伝えしたい。 「食えないし、『そろそろ足を洗おうかな』と思っていた矢先の“事件”。今、『辞めずに“宝くじ”を買い続けてよかった』というのが率直な感想です(笑)」 と安堵の弁を述べるのは、なでしこたちを足掛け8年、愛情を持って、時には厳しい目を持ち、追い続けてきたサッカーライターの江橋よしのりさんだ。 江橋さんのサッカーライターになるきっかけが奮っている。 「8年前、澤穂希のプレーを初めて見た時、その気迫にただただ圧倒されて……。直感的に、『この人をちゃんと見届け、伝える人がいないとダメだ!』と思ったんです」 就活で50社を回るも内定ゼロ。「大手出版社勤務の先輩に泣きついて」アイドルグラビア撮影のアシスタントとしてマスコミ業界に潜り込んだ江橋さん。30歳で澤たちと出会って以降は、急速にグローバル化する女子サッカーを追っかけて世界中を飛び回る仕事に、楽しさとやりがいを感じていた。だが、結婚し、40歳も目前となった今、「家族のためにも次の食いぶちを考え」ざるを得なかったという。 「これが最後のW杯になるかも」。複雑な思いを胸に秘め、ドイツW杯の現地取材を敢行した江橋さん。出発前はメディア媒体の関心は高くなく、取材経費の捻出も困難、今回も赤字を覚悟していたのだとか。 「今まで女子サッカーの国際大会を多く取材してきましたが、大会期間中の3週間、フルに滞在しても(取材経費と原稿料が)良くてトントンなんです。個人的には戦前の予想では『そこそこやるだろう』と思っていたんで、事前に多くの媒体に売り込みをしていったんですが、軽くあしらわれました(笑) 。試合ごとの速報記事を期待していた媒体からは『終わったら大会総括を一本書いてね~』なんて言われ、正直、頭を抱えてましたね」 なでしこがドイツに向け出発する際、中部国際空港には報道陣がほとんど来ていなかたことが帰国後話題になっていたが、現地の報道陣の熱気も同様だったという。 「大手通信社と全国紙数社、放映権を持つテレビ局はさすがに初戦からカバーしていましたが、それ以外は本当に僅か。その他にはドイツ在住とかの『普段は香川を追ってます!』という感じのスポーツ新聞社通信員が目立っていた程度です。カメラマンなんて、掲載媒体が決まらないまま来ている人までいて、写真を撮っては、あちこちに売り込みをしている姿はちょっと気の毒でしたね(笑)」 なでしこはニュージーランドを2-1、メキシコを4-0で下し2連勝。順調に予選リーグ突破を決めた。しかし、最終戦のイングランドに0-2で敗れ、決勝トーナメント1回戦で世界ランキング2位、優勝候補最右翼のドイツとの対戦が決まった。 「正直に言いますが、ドイツ戦の当日、荷物をすべてスーツケースにしまい、帰国の準備をしてからスタジアムに向かいました。今まで一度も勝てていない相手ですからね。“覚悟”を決めましたよ(笑)」 しかし、なでしこはドイツを延長の末撃破。その瞬間から江橋さんの環境が急変した。 「知らない電話番号から国際電話がガンガン掛かってきて、執筆やコメント出演のオファーがバンバン……。日本のフィーバーぶりを肌で感じて、ちょっと面食らいましたね。で、翌日の練習を見に行ったら報道陣の数が急に増え、外国のメディアも来ている。こないだまで浮かない顔してぼやいていた、仲間の記者やカメラマンとも『なんだ、W杯みたいじゃない』と冗談を言えるようになりました」 準決勝でスウェーデンを3-1で下し、ついに決勝のアメリカ戦。キックオフ直後から江橋さんは複雑な思いでアメリカ戦を見ていたという。 「アメリカと日本の力の差は歴然でした。前半を見ていて『これは0-5のゲームになる』と思っていました。今大会の最大得点差が4点(日本4-0メキシコ、フランス4-0カナダ)だったんですが、決勝の舞台、しかも全世界の前で“大虐殺”が展開されると覚悟しました。(もし大差で負けたら)日本に敗れたドイツ、スウェーデンの人たちに顔向けできないな、と思ってました」 その後のなでしこはご存じのとおり。決勝が終わるや、感動に浸る間もなく、原稿の山と格闘していたと江橋さん。帰国後も文字通り寝食を惜しんでの取材・執筆活動に、本人曰く「バブルを痛感している」とも。 来年の五輪まで約1年となった今、なでしこに対する、高まりつづける世間の評価とメダルへの期待に、江橋さんは気を引き締める。 「とにかく、9月1日から中国で始まる最終予選を勝ちぬかなくてはなりません。この予選は日本、オーストラリア、北朝鮮のW杯出場3か国に加え、中国も韓国もいる。このうちロンドンに行けるのは、わずか2か国だけなんです。特に警戒が必要なのは、オーストラリア。W杯ではスウェーデンに敗れたものの、FWのスピードには圧倒的なものがあります。私も現地でこの試合を見ていましたが、日本とはレベルが違うと痛感しました。また、予選開催国の中国も、日程と組み合わせ順からいってかなり有利だと思います……」 江橋さんに予選突破の確率を問うと「……50%」と専門家ゆえの控えめな数字であったが、あまたの困難を乗り越えてW杯の頂きに立ったなでしこJAPAN。我々のサポートで「突破確率100%」、そして「ロンドン五輪金メダル」に押し上げたい! 取材・文/遠藤修哉(本誌)
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