名画座の終幕に参加せよ!映画『インターミッション』いよいよ公開
銀座、唯一の名画座として映画ファンに親しまれた銀座シネパトス(http://www.humax-cinema.co.jp/index.html)の閉館まで、あと1か月。
2月最後の1週間は、大ブレイク中・壇蜜主演の『私の奴隷になりないさい ディレクターズカット版』に、スティーヴ・オースティンとドルフ・ラングレンという2人のアクションスターが競演する『マキシマム・ブロウ』、「~映画でよみがえる昭和~銀幕の銀座 懐かしの風景とスターたち」と題した特集上映で、『アカシアの雨がやむとき』『お嬢さん乾杯!』が上映されている。
エロにアクション、名画のリバイバルと、最後の最後まで銀座シネパトスらしいラインナップだが、さらに、もう1本。同劇場を舞台に撮影された『インターミッション』(http://www.facebook.com/pathos.lastmovie)が、2/23より上映される。
『インターミッション』は、映画評論家で同劇場のプログラムディレクターを務めていた樋口尚文氏が閉館の話を聞き、旧知の俳優やスタッフに声をかけて撮影が実現した「産直手作り」の作品。「喫茶店での思いつき」だったというが、主演の秋吉久美子は樋口監督からの出演依頼に“即レス”で快諾。ほか、染谷将太、香川京子、小山明子、水野久美、竹中直人、佐野史郎、佐伯日菜子、寺島咲など、往年の大女優から若手ホープまで総勢33名の役者が全員“友情出演”している。
⇒【写真】『インターミッション』よりhttps://nikkan-spa.jp/?attachment_id=393129
閉館される劇場のクローズ作品に、その劇場を舞台にした映画が上映されるなんて異例中の異例だが、物語も枠にとらわれない。取り壊しが決まった名画座に訪れる、クセのあるお客さんたちが休憩時間(インターミッション)に交わす会話を大きな軸としながら、気づけば、物語は思いもよらぬ方向へと展開。そこには笑いにユーモア、怒りに涙、そして“奇跡”アリと、「なんでもアリなのが映画」ということを再認識させてくれる作品なのだ。
昨年度の映画の興行収入は約1952億円で、前年と比べて1.1%回復したとか、邦画シェアが65.7%と1969年以来の6割超だとか、50億円超の邦画が4本もあったとかいうけれど、この国の“映画”を取り巻く環境は決して明るくはない。
昨年10月には浅草新劇場、浅草名画座、浅草中映劇場の3館が、先月には三軒茶屋中央劇場が閉館するなど、施設の老朽化やデジタル化への対応の難しさから名画座の閉館は相次いでいるし、年間400本もの映画が製作されながら、上映できず“お蔵入り”となる作品も少なくない。
銀座シネパトスの閉館にあたり、『インターミッション』にも出演している時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野氏は、こうコメントを寄せてくれた。
「夜、仕事からの帰りに近くを通るたびに、映画好きな男の人がひとりで出入りする姿をよく見ていたので、ここは通が来る場所なのだと思っていました。こういう街の隙間、隠れ場所みたいな場所がなくなるのは、都市文化がつまらなくなる要因になると思います」
街も映画もなんとなく形どおり。「仕方がない」と言ってしまえばそれまでで、『インターミッション』はそこに抗いたい樋口監督の批評映画でもあるように思う。が、「なんでもありなのが映画」! 面倒くさい映画論などおいておいて、単純に作品を楽しめばいい。
「銀座シネパトスって、どこか“ふきだまり感”のある場所だと思っていましたが、この映画は、その吹き溜まりエキスを凝縮して、最後に世界中にまき散らした。やってくれた~! すごく痛快で、すごくさびしくて、でも、やっぱり痛快。樋口監督はじめ、映画に参加したすべてのみなさんに感謝を込めた拍手を送りたいです」(ペリー荻野)。
マーロン・ブランドは、「映画館では、その暗闇に魔法をかけられた観客が、俳優に代わって大体の演技をしてくれる」という名言を残した。歴史ある名画座の終幕に観客として参加してみてはいかがだろうか。
<文/小山武蔵>
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