ドルの「オバマ・ショック」という危険
シリア攻撃問題とドル円の関係は、当初はリスク回避を基準にする考え方が基本だった。「シリア攻撃→リスク回避→株安・円高」、「攻撃回避→リスク選好→株高・円安」といった関係だ。
◆シリア問題のノーコントロール
ところが、11日のオバマ大統領の発言後に、シリア攻撃観測が後退したにもかかわらず、ドル安・円高となった。11日の米株は上昇したので、その意味ではリスク選好との反応だったのだろうが、にもかかわらずドル安・円高となったのは、株高になったものの、一方で米金利低下となったためとの理解が基本になるだろう。
ではなぜ、リスク選好で米株高となったのに、米債は買われ、利回り低下、つまり米金利低下になったのかといえば、ベライゾンの大型起債関連の需給的要因で解説しているのが一般的なようだ。
直接的には、以上のような解釈でいいと思うが、それと並行してオバマ大統領への信頼感の低下ということも進んでいるようなので、これが今後どのような影響になってくるかは興味深い。
双日総研の吉崎副所長が、自身のブログ「溜池通信」で示している今回のシリア問題に対するオバマ大統領の姿勢についての見解は極めて手厳しい。
「自分が目指しているのは限定的な攻撃だ、とのこと。だったらそれは笑止千万な話で、限定的な攻撃なのであれば、最初から議会の支持など求めなければよかった。そしてロシアが提案している化学兵器の国際管理は、ほとんど現実味がない。どんどん袋小路に入っている感あり」。
「オバマとしては、海外におけるアメリカの評判を落としてもいいから、国内での自分の支持率だけは何とか守ろうとしているのであろう。が、おそらく両方とも失うんじゃないだろうか。ほんの1年ほど前に、『2030年の原発比率を国民アンケートで決めよう』とした政権があったけれども、今回の事態にはそれと同種の優柔不断さを感じる」。
要するに、シリア問題について、オバマ大統領は見たままの印象通りに、コントロールできない状況が続いているようだ。金融市場は不透明感を警戒する。「ノーコントロール」が深刻化するようなら、リスク選好に影響してくる可能性も注目される。 (了)
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
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