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“法令遵守偏重型”企業の生産性は落ちる

◆コンプライアンスとはいわば“オフサイドライン”なんです

戸村智憲氏

戸村智憲氏

 コンプライアンスに関して、リスクを恐れるあまりに迷走している企業も多いわけだが、日本マネジメント総合研究所の戸村智憲氏は「後手に回るつぎはぎ型コンプライアンスや、アリバイづくり型や抑えつけ型コンプライアンスは失敗する」と話す。

「禁止事項で縛る“法令遵守偏重型”では、従業員の意欲や生産性は低下します。コンプライアンスとは、『法令遵守+社会的規範の積極的尊重』。社員の理解を深めるには、現場目線と経営視点を併せた“導き型”で善行へ吸引することが必要なんです」

 つまり、内部統制に必要なのは、社員が幸せになるために行う/行われているという認識の共有。

「みんなで作ったルールをみんなで守り合う幸せづくり型コンプライアンス指導では、互いの幸せを壊すセクハラ・パワハラや育児・介護をする社員への嫌がらせなども減りやすい。多様性尊重の中でも超えてはならない『ガードレール』の確立と、経営理念から役職員の思考軸やベクトルを提示する“導き型コンプライアンス”が、健全に儲け続けるための仕組みとして重要性を増しています」

 話題のSNSの利用については、利用のガイドラインを作り、「禁止事項の列挙ではなく具体的にどうしていけば良いか導く」と、当たり前のことから丁寧に教えてあげることが大事だとも。

「同じ“内容”のことを投稿するにも、その“表現”を間違えば、職場の仲間に不幸せな思いをさせてしまう。また、むちゃな対応をすれば、ネット上の読み手も同じむちゃなルールで正義の報復として、炎上や仕返しの投稿・掲載などがあることも知っておくべき」

 またコンプライアンスは随時アップデートも必要だという。

「一連のバイトテロ、バカッター事件を受けて、『今の若いものは倫理観がない』と言う人もいますが、若者の倫理観がなくなったわけではありません。社会状況の変化に応じ、倫理観の“常識”とされるエリアがシフトし、かつての常識が通用しなかったり、セクハラ規定のように昔より厳しくなったりする。サッカーのオフサイドラインのように時と場合によりコンプライアンス対応は適応と対応の工夫が不可欠なんです」

【戸村智憲氏】
早稲田大学卒。米国MBA修了。日本マネジメント総合研究所理事長。バイトテロ対策で独自提唱の「ソーシャルメディア・コンプライアンス」など幅広い経営指導を行う。『企業統治の退廃と甦生』『危機管理型クラウド』など著書多数

取材・文/志賀むつみ 田山奈津子 福田 悠 古澤誠一郎 イラスト/佐藤ワカナ
― 今日も職場はコンプライアンスに大忙し!【9】 ―

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