「不景気な業界」7つの特徴
アベノミクスで景気が上向いたと言われるが、賃上げやボーナスの増加でホクホク顔なのは一部の大企業だけ。その恩恵に与れず過酷な状況にあえいでいる業界は多い。共通するキーワードは「長時間労働」と「定額残業代」だ。介護、飲食、IT、アパレルetc.の悲惨な経営環境、労働実態をリポートする!
◆労働問題の専門家が指摘。今、悲惨な業界はここだ!
日本経済団体連合会が発表した今夏の大手企業のボーナス集計によると、平均額は昨夏に比べて7.19%増の86万7731円となった。2年連続のアップであり、バブル期の’90年以来、24年ぶりの伸び率だ。今春は16年ぶりの大幅賃上げといい、確かにアベノミクス効果によって大企業を中心に景気は改善している。しかし、アベノミクスから「蚊帳の外」に置かれた不景気業界は依然として多いのだ。
今年の4月以降、アルバイトの時給が最高値を更新しているにもかかわらず、人材確保がままならない飲食業界が典型的だ。これには業界特有の長時間労働、処遇の低さが影を落としている。
「飲食業界は、店舗の営業時間が長いうえに繁閑を読むのが難しいため、店員の長時間労働が常態化。休日はろくに取れず、休憩時間は客待ちの空き時間に充てることが多い」と語るのは、企業の人事労務関連のコンサルティングを手掛ける社会保険労務士の佐藤広一氏。
さらに指摘するのは、有名企業の正社員でも社会保険に加入させていないケースが多いという事実。
「健康保険や厚生年金に加入させる意識が低い。理由を聞くと『昔からウチの業界はずっとこうだから!』の一点張りなんですよね」
なかなか上向かない、介護報酬に頼らざるを得ない介護業界も悲惨な状況にある。
「勤務年数が7~8年の人でも手取り17万~18万円台が珍しくありません。夜勤や利用者からのクレームなどストレスが大きい割には収入に繋がっていないのです」
長時間労働の代名詞、IT業界、アパレル業界に共通するのは人材の流動性が高いこと。人手不足が深刻化する中で、若年層の使い捨てのツケが回ってきたと言える。
「IT業界は、数十時間分の残業手当をあらかじめ給料に組み込む『定額残業代制度』を大半の企業が採用しています。残業が月100時間を超える者も少なくなく、メンタル疾患が最も多い業界の一つです。SEが話題に上りやすいですが、ベンチャー企業では営業職も過酷です。肩書は『コンサルタント』ですが、実は新規開拓要員。ノルマを達成しないと上司からパワハラを受けるケースも聞きます」
これらの業界では勝ち負けの二極化が著しく、今後も熾烈になると佐藤氏は分析している。
<不景気業界7つの特徴(佐藤氏調べ)>
1.長時間労働の常態化
2.シフト制や2交代制など勤務時間が不規則
3.定額残業代が支給されている
4.非正規雇用が多い
5.メンタル疾患者が少なくない
6.就業規則や労働契約書が整備されていない
7.管理者のマネジメントに対する意識が低い
【佐藤広一氏】
特定社会保険労務士。さとう社会保険労務士事務所代表。リスクヘッジ型就業規則の提案から海外進出コンサルまで幅広い人事労務サービスを展開
― なぜこの業界は、不景気のままなのか?【1】 ―
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