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「やっぱり解散はない?」政治記者からの疑問の声

 永田町はおろか、日本がすっかり解散風に染まっている。

「やっぱり解散はない?」政治記者からの疑問の声 風を吹かしたのは読売新聞。11月11日付の朝刊1面トップで「来週中の解散浮上 衆院選12月14日が軸」と打ったうえに、同日の夕刊1面トップでは「公明 衆院選準備を指示」と続報を流したのだ。翌12日には産経新聞が1面トップ「首相 来月総選挙 決断」と断定的に報道。これで、「もはや解散は確定的」という空気が醸成された。

 だが、APCEに出席していた安倍首相は11日に訪問先の北京で「(解散は)何ら決めていない。みなさんご存知のように、私自身、解散に言及したことは一度もない」とコメント。12日には首相の女房役である菅義偉官房長官も、「解散は首相の専権事項である。そうした(首相が自民党幹部に解散の意向を伝えた)ことはありえない」と明言した。

 首相とその最側近はともに、解散に否定的と思えるコメントを発信しているのに、なぜ解散風が止む気配はないのか? 全国紙政治部の記者が話す。

「首相が外遊から帰国する17日には消費増税の判断材料となる7-9月期GDPの速報値が発表されるが、民間ベースの予想値を見る限り、予想以上に数字は悪い。そうなると増税の先送りもやむを得なくなるが、先送りするのであれば国民に信を問わねばならない、というのが理屈です。ただ、実際にはダメージコントロールという意味合いが強い。そもそも来年10月の再増税は、消費税増税法案で決まっている話。経済指標が悪いからと増税を見送るならば、新たな法案ないし法改正が不可欠となり、党内外の増税賛成派・反対派入り乱れて、国会は空転しかねない。増税を強行すれば、『景気の悪化を無視した』と支持率が急降下しかねない。どっちにしても支持率低下は避けられないので、かつての麻生政権の “追い込まれ解散”のようになるよりは、先に解散してしまったほうがダメージが少ないというわけです」

 要は、「信を問うべき」ことは何もなく、党内事情が解散風を盛り上げているというのだ。それを裏付けるような話もある。政治ジャーナリストの藤本順一氏が話す。

「最近、自民党がうちうちに調査を行ったところ、すぐに解散に持ち込めば255議席獲れるという結果が上がってきたと聞いています。現有議席よりも40議席近く減らす計算になりますが、優に過半数は超えている。それなら今すぐ解散に打って出て、懸案の増税問題を処理してしまったほうが傷は浅いと考えた側近連中が、解散話をリークしたわけです」

 結果、永田町は解散へ一直線。ワイドショーまで連日のように「選挙カーのレンタル店に問い合わせ殺到」などと援護射撃を打つものだから、「ここまで来たら解散もやむなし」なんて、発言まで飛び出している。だが、「年内解散はありえない」と見る専門家も少なくない。前出の藤本氏がその一人。

「まず、増税を問う選挙はあっても、“増税しないこと”を問う選挙などありえません。争点にならない。みんな・社民・共産・生活は早期の消費増税には元から反対していたし、民主党内にも反対派は多いんですから。“自民党内の増税派”を黙らせるための解散という意味合いもあるのでしょうが、そのために解散権を行使しようものなら、保守政治家の名折れ。特に、来年は自民党結党60周年という節目です。60周年の総裁を務めるということは、安倍首相にとって特別なこと。その記念すべき年を最高の状態で迎えるために、道路族のドンである二階俊博氏を総務会長にすえ、元総裁の谷垣禎一氏を幹事長にすえるウルトラCで盤石な党内基盤をつくってきたわけです。それなのに、議席が減るのがわかっているうえに、大義名分がない……なんていうリスクだらけの選挙なんてやるはずがない」

 真っ向から解散を否定するが、実は前出の政治部記者も含め、「増税延期で信を問う……という自社も含めた新聞の論調は意味不明(苦笑)」と話す人は数多い。党内からも「大義名分のない選挙はよくない」(野田毅税制調査会長)という声も噴出しており、仮に解散を決断しても党内が二分されるのは必至な状況。

 果たして、前代未聞の「増税しなくてもいいですか?」解散はあるのか? 19日にも解散するという見方が大勢を占めているが……安倍首相の潔い決断に期待したい。<取材・文/池垣完(本誌)>




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