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国対担当交代のすゝめ<著述家・菅野完氏>

―[月刊日本]―

立憲民主党と維新の会の〝共闘〟

国会議事堂 臨時国会への国会対応で、立憲民主党と維新の会が〝共闘〟するとのニュースは、各方面に驚きを持って迎えられたようである。  なかんずく、滑稽なまでに驚き慌てふためいていたのは、維新の会の大阪府議団と、れいわ新選組・山本太郎代表だろう。  まず、維新の会大阪府議団の主張を振り返っておこう。毎日新聞が報じるところによると、9月28日にあった大阪維新府議団の総会で久谷真敬代表は「大阪維新は民主や立憲とは大阪都構想などで戦ってきた」「唐突に共闘と言われても我々は何の説明も受けていない。府民からも心配や失望の声をいただいており、断じて許しがたい」などと述べ、府議団として立憲との共闘に反対し、合意の経緯について説明を求める申し入れを国政維新に対して行うと表明したという(9月29日朝刊「維新と立憲の『共闘』 『容認できない』維新・大阪府議団が反発」)。結果としてこの悶着は国政維新の藤田幹事長が府議団側に立憲民主党との合意に至った経緯を説明することで決着を見たという。  しかし、注目すべきは維新府議団側の主張の幼稚さだろう。「何の説明も受けていない」ことを理由に「府議団」が「国会対応」に対して「断じて許し難い」と断言するのはお門違いも甚だしい。松井一郎代表が本件に関し府議団に言い放ったとおり「あまりにも幼稚」と言わざるを得ないだろう。  れいわ・山本太郎氏も同じく「あまりにも幼稚」である。山本氏は会見で立憲民主党と維新の臨時国会での〝共闘〟について、「最悪の悪魔合体。悪夢でしかない」と放言している。確かに会見で山本氏は「どうこういえる立場にない」と一定の留保を見せたが、立憲・維新の国会対応合意を悪魔呼ばわりし「他の野党との連携を考えねばならない」と政局めいたことを口走るのは、政党代表として稚拙にすぎる。  山本氏は、みずから衆議院の議席を放擲し参議院に転じた。泣こうが喚こうが、衆院が予算案を先決する規定がある以上、国対は山本氏が捨てた衆院での折衝がメインになる。その山本氏が捨てた衆院では、れいわ新選組の議席が残っており、同党の多賀谷亮氏が国対委員長として他党との折衝にあたっている。その最中に、国対としては気楽な参院の側から野党間の国会対応折衝について悪魔呼ばわりし他党との模索に言及するなど、言語道断。多賀谷氏の折衝の枠を自ら狭める愚行と言わざるを得ないではないか。

共産党の成熟した対応

 このように幼稚な人々がいる一方、共産党の志位委員長の対応は、その成熟さと政治家としての目配りの確かさという意味で際立っていた。  臨時国会での立憲・維新共闘が報じられた翌日の9月22日、志位委員長は定例記者会見で記者からの質問に対してこう答えている。 「まず、わが党として維新の会にどういう姿勢で対応するかを答えたい」  つまりあくまでも維新の会についての認識を答えるというのだ。そして志位氏は維新を「自民党よりもより極右的な立場から自公政権を引っ張る補完勢力」と明確に規定し、その上で「私たちは維新の会とは正面から対決し、打ち破っていくという相手だ。そういうものとして今後も明確な対応をしていきたい」と断固たる意志を示した。  ここまでの発言ならば単に維新の会を強く批判しているだけのことで、志位氏ならずとも凡百の政治家でも口にすることができる内容だ。しかし志位氏の真骨頂はこうした一連の維新批判の中に「日本共産党として国会の民主的な運営などで個別に一致する点があれば共同の行動をとることはあり得るし、これまでもそういう行動をとってきた」という一言を、絶妙なタイミングで織り交ぜるところにある。  この一言があればこそ、同党の穀田国対委員長などが行う現場での折衝に幅を持たせることができる。また、この一言があればこそ、これまで共産党が立憲民主党との間に重ねてきた数々の交渉の果実(そのほとんどは、共産党側の我慢と妥協の産物である)を損ねることもない。  事実、この会見の数日後、立憲民主党の安住国対委員長と共産党の穀田国対委員長は、臨時国会で両党の国会内共闘について合意を交わすことに成功している。志位氏が政党代表として含みのある発言を残していればこそ、「維新とも共闘する立憲との国対折衝」という難事業が成功したのだろう。 
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〝当たり前のこと〟ができていなかった立民国対
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特集②五輪汚職と外苑再開発 利権政治と決別せよ

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