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谷繁ドラゴンズの一年を振り返る――地元記者「ありえないことが起きた8月の大阪ドーム」

谷繁元信兼任監督

沖縄キャンプでブルペンを視察する谷繁元信兼任監督

 古田敦也氏以来、8年ぶりとなる兼任監督としてドラゴンズの監督に就任した谷繁元信兼任監督。週刊SPA!本誌では今年の3月より、谷繁元信兼任監督のコラムを連載してきた。日本プロ野球史上初となる現役監督の週刊誌連載では、新聞やテレビでは垣間見ることのできなかった、素顔の谷繁元信の本音、組織論、野球論が語られた。  そんなドラゴンズの成績は、8月までの好調と打って変わり、CS進出を逃し、なんとか4位で今季をフィニッシュした。11月17日発売の週刊SPA!では、谷繁元信兼任監督コラムの今季の連載最後となるスペシャルインタビューを掲載。その中で、監督としての苦労や来季について抱負を語って頂いた。そこで今回はその番外編として、日刊SPA!では地元記者、アナウンサー、谷繁元信兼任監督担当ライターに谷繁ドラゴンズの一年を振り返ってもらった。 <スポーツ紙記者編>  最初に登場していただいたいのは、ドラゴンズファンの聖書とも言われる中日スポーツのキャップ、伊藤哲也氏だ。伊藤氏と谷繁監督との付き合いは古く、横浜時代にまで遡る。監督が心を開く数少ない記者でもある。そんな伊藤氏に今年のドラゴンズを振り返ってもらった。 ◆ありえないことが起きた8月の大阪ドーム ――交流戦では首位にも立ち、戦力的に苦しい中でもドラゴンズはなんとかペナントレースにしがみついていました。結果、4位という順位で終わったわけですが、今年のドラゴンズのキーポイントになった試合などはありますか?
中日スポーツのキャップの伊藤哲也氏

伊藤哲也……中日スポーツのドラ番キャップ

伊藤「8/20の大阪ドームであった阪神戦だね。あの試合では、大島と藤井が衝突して落球という“ありえないこと”が起きた。あの落球で負けてそこから連敗に突入したんだけど、連敗中もサインミスなどの初歩的なミスが連発したんだ。まぁ、ああいうことあると、野球というのは流れでだいたいああなる(連敗する)」 ――監督も本誌に「あの試合ではありえないことが起きた」と語っています。 伊藤「8月の大型連敗があるまでは“よくやってた”と思う。あのメンバーで5割近くの勝率を維持できたことは、監督の手腕によるもの。投手陣も監督がうまくやりくりして、後ろの又吉と福谷、あたりが成長したんで、拾えるゲームはなんとか拾えてきたっていう最低限の取りこぼしだけはしてなかった。」 ――たらればで語るのは禁句かと思いますが、あの落球がなければ……とは言えますか? 伊藤「もう少しは食らいつけたかもしれないけど、俺は最後に息切れしたと思う。もう少し可能性のあるとことで戦えたかもしれないけど、俺はあの8月落球するまでの5割近辺、あそこまでが出来過ぎ感があった。あのメンバーであの戦力で……そして怪我人も出たでしょ。べんちゃん(和田選手)もいなくなったし。途中でルナも抜けたし、大島も抜ける時期があって、それでも粘ってた。べんちゃんもちょうど調子が上がってきたところの骨折だったからね」 ――やはり戦力、選手層の薄さはいかんともしがたいものだと。 伊藤「接戦まで持ち込めるけど落とすっていうのは戦力の薄さもある。打線はけっこう良かったんですよ。春先からずーっとね。打線で勝った試合もけっこうあるんだけど、8月で森野が打てなかったっていうのもあるし、森野も大島もバテてきた。いわゆるレギュラーのバテが多少影響したかなと。だから9月になって日程が空いてちょっと疲れがとれたら勝ち始めたわけです」 ――8月の過密日程はキツかったと。 伊藤「あれは選手にとって本当にキツいと思うよ。ただ、8月の過密日程をふんばらないと優勝争いとかCS争いは無理だしね。9月の日程空いてからみんな元気になってきた」 ――練習から見てるとやっぱり選手はちょっとバテてるなと感じましたか? 伊藤「それはあったね」 ◆4位に沈むも来季に向けた光明も…… ――苦しい台所事情の谷繁ドラゴンズでしたが、来季に向けての光明はありますか? 伊藤「ピッチャーだと又吉、福谷かなあ。後ろの計算がある程度たつピッチャーが出てきただけでもね。来年以降の先発は、7回まで頑張ればって計算もできるんで。この2人は今季一番の収穫ですよね。野手で言えばまだまだかな。大島も今年3割打ってるけど、まだ物足りない。もっと盗塁しないといけないし、守備範囲にしてももっと改善できる。それだけの能力はあるんでね。野手でいうと開幕4番に据えた平田も途中で怪我するしねぇ……。今、土井さんを呼んでいろいろやってるけど、もう、27歳でしょ。一気に覚醒してもらわなきゃ困る選手だよね」 ――谷繁監督についてはどのように映りましたか? 伊藤「僕が思ってたのは監督が後半にもうちょい出てほしかった。でも監督に言わせると途中から出てくがすごくしんどかったと。本人も兼任監督をはじめてやって肉体的にも精神的にもバテてたけど、来年はある程度はリズムは作れると思うんだよね。やっぱりドラゴンズの一番の武器はキャッチャー谷繁なんですよ。相手が嫌がるのはキャッチャー谷繁。肩も全盛期とくらべりゃ、そりゃ衰えてはいるけど、谷繁元信を超えるキャッチャーはなかなか出ないですよ。監督の出場数が減ったのも4位に沈んだ要因じゃないかな」 ――ズバリ、来年のドラゴンズ、明るいですか? 伊藤「非常に微妙なところだね。まだ編成も決まってないので、なんとも言えない。でもね、後退することはない。明らかに、着実にチームが良い方向に行ってるのは確かなこと。それにあのタフな練習を経て体力もついてきてるし、今年一年間厳しくやってきたことは大きい。監督も来年は兼任の2年目でリズムもある程度わかってきただろうし、ドラフトで即戦力も取れた。外国人も今回はある程度お金を使って連れてくるみたいだしね。そこが決まれば、もう少し具体的なビジョンも見えてくるんじゃないかな。 ⇒【次回】「東海ラジオの森貴俊アナウンサー」編
https://nikkan-spa.jp/750671
【伊藤哲也氏】 谷繁監督とは横浜時代からの旧知の仲。今年は中日スポーツのドラ番キャップとして精力的にドラゴンズ、そして谷繁監督を取材 <取材・文/日刊SPA!取材班> ― 谷繁ドラゴンズの一年を振り返る【1】 ―
週刊SPA!11/25号(10/17発売)

表紙の人/柏木由紀

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