中日・谷繁監督は“選手としての谷繁元信”をどう見るか?
―[俺の職場に天才はいらない]―
― 連載<俺の職場に天才はいらない!>谷繁元信監督兼選手の管理職的独り言 ―
◆自分の実力を見極めよ! 中間管理職こそ自己評価が求められる
野村克也さんが持つ、出場試合記録を越えたのは7月28日に名古屋ドームで行われた対阪神戦。
デビューしたときは自分がまさかこんな記録を残せるとは思わなかったから、正直「よくここまでやってこられたな」という気持ちだよ。でも、オレは何度も言うようだけど、記録を残すために野球選手をしているわけじゃないし、今は兼任監督でもあるわけだから、チームが勝つことが最大の目標。これからはこの記録に恥じないように勝たなきゃダメだって改めて思ったところだよ。
◆選手としての谷繁を監督谷繁はどう見るか?
最近、ドラゴンズは若手の選手を多く起用している。遠藤や若松、桂に杉山、そしてちょっと若手とは言えないかもしれないけど、赤坂なんかも頑張っている。ベテランもうかうかしていられない状況は、チームに新しい風を吹き込んでいると感じている。
ドラゴンズにはベテラン選手が数多くいる。忘れてならないのは、そのベテラン選手の1人にオレも入っているということだ。捕手というポジションは、ある意味とても難しいポジションだ。打撃では打つことを求められるのは当たり前として、守りになれば配球の組み立てから始まってゲームの流れをつくること、投手や野手陣の統率、そして守備力と求められることが非常に多い。
そのため、捕手にはある程度以上の実戦経験がどうしても求められる。オレの実戦経験は言うまでもなく球界で一番だ。しかし、残念ながら肉体的な衰えは絶対的にあるし、若手と同じパフォーマンスで全試合出られるかといえば、それは現実的に厳しい。もちろん、野球選手としては毎試合、試合に出て活躍したいと思うよ。ウチの二軍にいる加藤(匠馬)ってすごい強肩の選手がいるんだけど、あの肩があったら、今でも全試合出られるなって思うもん。
でもね、そんなオレでも選手としてベンチにいる以上は戦力として“監督のオレ”は“選手のオレ”を見ている。選手としてのオレの強みはさっきも言ったけど経験。試合が壊れそうなときなんかは、やっぱりベテランの試合感は重要な武器になる。
ベンチにいれば「いざとなれば谷繁が……」と敵も味方も思う。この「いざとなれば谷繁が……」って言葉は敵と味方ではまるで持つ意味が違う。味方にとっては安心、敵にとっては嫌なことにほかならない。また、要所でオレが出て行くことで、若手はその試合のポイントを学ぶこともできる。
監督を兼任したことで、オレは自分自身をさらに客観的に見ることができるようになったと思う。上に立つ人間は更に上から自分を見つめていないとダメなんだ。そうでなきゃ、部下である選手に対して示しがつかないじゃないかと。
何度も言うけど、ベンチにいる以上はオレも戦力。監督としては、オレを追い出すくらい若手には頑張ってほしい。でも選手としては、オレもまだまだ負けないつもりだよ。
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