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中日・谷繁元信、ベテラン勢の引退について語る

― 連載<俺の職場に天才はいらない!>谷繁元信監督兼選手の管理職的独り言 ―

 ペナントレースを戦いながら、その時々で思ったこと、感じたことを吐露してきたこのコラム。早いもので間もなく連載50回(※)を迎えようとしている。今回は自分も含めたベテラン選手の引退について、ひと言触れたいと思う。

※コラム『<俺の職場に天才はいらない!>谷繁元信監督兼選手の管理職的独り言』は週刊SPA!にて連載中

去りゆく君へベテラン勢の引退に寄せて

引退会見を行った谷繁監督。その顔はとても清々しく晴れやかなものだった(写真/産経新聞社)

 連載をはじめるにあたって最初にしたことは、タイトル決めだった。プロの世界で過ごした27年間は、本当にいろんな仲間と一緒に時を過ごしてきた。そんなオレにはひとつ、確信めいた想いがあった。それは「プロの世界で長くプレーしてきた選手に、天才はいない。いるのは努力の人だけ」という、オレの野球観ともいえる気持ちだった。

 少し解説を加えよう。管理職となるにあたって、オレは「結果に至るプロセスを重んじたい」という気持ちがあった。誰かをスタメンで使えば、誰かは控えに回るのがこの世界の常。メンバーを決める、采配を振るうにあたって、オレはなるべく平等な視点での人選を心掛けてきた。

 監督を経験してわかったんだが、二軍で少し目立った選手がいると、なぜ上(一軍)に上げないの?という周囲の声が聞こえてくる。そんなときにオレは、この言葉の重みを噛みしめてきた。

 プロの世界は今日、調子が良かったから、明日から活躍できるほど甘くはない。

 花が開くには我慢の時間が必要なんだよね。

◆日々の積み重ねの大切さを教えてくれるベテランの存在

 優勝したい、勝ちたい、レギュラーを取りたい……。目標を設定することは大切なことだと思う。でもそれだけじゃ絶対に無理だ。目標を設定したら、そこに至るために、今の自分には何が足りなくて、いつまでに何を達成すればその壁を乗り越えられるのかを逆算して、日々の積み重ねで自信をつけていくしかないんだよ。

 ここはオレたちの仕事も、サラリーマンの仕事も、基本は同じだと思うんだ。地味で苦しい毎日の積み重ねこそが、いざというときの力となって発揮されるわけでしょ。そりゃ、たまには運の強い人もいて、華やかな一発逆転でなんとかなっちゃうこともあるかもしれないけど、安定的に強い人はコツコツと努力を続けた人なんだよね。

 そういった意味で、今シーズン限りで引退を表明した和田一浩、小笠原道大という2人のベテランの存在は非常に大きかった。オレは第一回のWBCでは控え選手だったけど、王監督がここぞという大一番にスタメンで起用してくれたりして、非常に多くのことを学んだ。野球は9人ではできないスポーツ。控えに圧倒的な存在感があるベテランが出番を待ち構えているのは、ベンチを預かる身としては本当に救われたものだった。

 時には敵として、時には味方として、同じ時代を戦ってきたアラフォー世代の引退は、どうしたって胸に迫るものがある。ベンちゃん、ガッツの勇気ある決断は、最終的に9月に入って現役引退を決断した自分の引き際とも決して無関係ではなかった。

 野球は失敗のスポーツだ。どんな名選手だって、引退の際は後悔が残るもの。でも最後までバットを強振し続けた2人の引退は、現役時代にできることは全てやり切った清々しさを感じた。去りゆく2人は、後輩たちに有形無形のメッセージを残してくれた。それは来年以降、ドラゴンズの監督として選手を預かる身としては、何よりのメッセージだった。

※「俺の職場に天才はいらない!」は週刊SPA!にて好評連載中




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